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UBSウォーバーグ証券会社・経済調査部チーフエコノミストの白川浩道さん(Hiromichi Shirakawa/ Chief Economist, UBS Warburg (Japan) Ltd.)は今日のポイントとして、「政策の見方:「金融緩和と不良債権処理加速」はもう古い? 」を挙げる。政府保有の優先株の普通株への転換基準が明らかになる。基本的には 「改革先送り」である。しかし、「外国人投資家、欧米政府ともに、それを受け入れる」と見る。アメリカのエコノミストは、不良債権処理の加速と金融緩和の拡大を声高に叫んできたが、「そうした処方箋はもう古い」として、「緩やかな企業改革と財政刺激といった政策ミックスを恥じる必要はない」と語る。海外からの批判はもう出ない、と言うのだ。
<銀行に収益確保迫れば、広義のコスト・カット要請に等しい> 金融庁は、政府が引き受けた銀行優先株の普通株への転換基準を公表する。新聞報道によれば、転換基準の基本は2期連続の優先株無配である。 政府が無配を基準に普通株転換を図ることは、極めて当たり前のことであるが、 銀行に収益確保を迫ることになる。「昨今の極めてフラットなイールド・カーブからすれば、銀行の収益力には大きな限界がある」。従って、銀行に収益確保を迫れば、それは、広い意味でのコスト・カットを要請することに等しい。ここで、政府が銀行に対して、資産査定の更なる厳格化を迫れば、銀行はより厳しい経営合理化を実施せざるを得ない。優先株の普通株への転換は、ガバナンス強化の名の下で、銀行改革を迫るものである。そして、銀行改革の過程では、企業改革を避けて通ることはできない。銀行は収益確保のために、大手企業を含め、不採算の借り手企業に対する支援打ち切りを目指すことになる。不採算企業と長く付き合っていくことは、ジワジワと銀行の収益を蝕むことになりかねない。引当てさえあれば、法的整理に持ち込んだ方がコストが小さく済む可能性が高い。このように、「国が優先株の普通株転換をちらつかせることで、今後、大手過剰債務企業に対する圧力が高まっていく可能性が高い」と見ている。
<大胆な企業改革断行に、2年程度の時間的猶予が生まれた> しかし同時に、「こうした企業改革圧力は一気に高まることはない」とも言う。それは、普通株への転換が2期連続での優先株無配であるためである。政府は、大胆な企業改革の断行を2年程度は先延ばしすることが可能になった。そして、「この間に、企業再生・産業再生のメカニズムを補強していくことができれば(現行の産業再生機構で は建設業等の国内構造不況業種の再生は展望しにくい)、ソフト・ランディング型の企業構造改革が可能となる」。 悪く言えば、今回の普通株転換基準は、「改革先送り」を示唆しているに過ぎな い。しかし、一気に普通株転換、銀行国有化という事態になれば、借り手企業の混乱は免れない。中長期的には、経済資源のより効率的な配分を達成していく必要があるが、「世界的な景気後退、デフレ圧力の深刻化の下で、ここ1−2年はソフト・ランディングを目指すことが必要」と言う。
<需要創出効果の薄い政策は、「過去」のものに・・・> そして、そうしたソフト・ランディング政策は、現下の国際情勢の下では、海外投資家から、むしろ前向きの評価を受ける可能性が高いことを、昨日指摘した。 米国・欧州諸国の政府も、「自国の実体経済が悪化し、金融システムが疲弊する状況では、日本にハード・ランディングを求めることはないであろう」。日本のマク ロ経済政策運営は、「緩やかな企業改革の下での財政政策の更なる転換」といった方向性がより鮮明になってくるものと予想される。「需要創出効果が薄い金融緩和と不良債権処理の加速」、といった、米国の主流派エコノミストが望む政策ミックスは、もはや過去のものになりつつある、と言う。