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亀井幸一郎氏:戦況の変化に揺れる市場(マーケット) ☆☆ [住友ゴールド]
http://www.asyura.com/0304/hasan25/msg/243.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 4 月 04 日 20:32:15:


株式を中心とした金融市場、そして金市場、また原油市場も、イラク戦の戦況を横
目に睨みながらの展開が続いている。

NY株式市場(ダウ平均)が、3月12日以降8連騰、率にして13%、値幅で1
000円もの上昇を見せたのは、「イラク戦は米英軍の圧倒的優勢のもと短期で終
結する」というシナリオに沿ったものだった。それは「士気の落ちているイラク軍
は、開戦後に投降者続出で自壊する。そのためにも、開戦早々に圧倒的戦力の差を
認識させるような、つまり相手の度肝を抜くような攻撃で、戦意をさらに萎えさせ
る作戦が有効。結果的に、この戦争は短期で決着がつき、イラク市民の被害も少な
くて済む」というCIA(米中央情報局)情報を基にした国防総省の見通しが前提
となっていた。結果的には、ヘッジ・ファンドなど主要な「売り方」が、その空売
りポジションを一気に巻き戻した(つまり買い戻した)ことが、今回のNY株式の
派手な戻り相場につながった(「売り」の「買戻し」だけに新規資金の流入は少な
い)。逆にさらなる上昇を読んでいた原油市場は、利益確定と“手仕舞い(損得に
かかわらず決済する)”売りで急落、一時は30ドル台後半まで買い進まれたもの
が、わずか4営業日で26ドル台まで売り込まれた。そのあおりで金市場ももう一
段の売りを浴び、320ドル台に押し戻されることとなった。

その後、思わぬイラク軍の抵抗に米軍の進撃が止まったが、その際には、株とドル
は急落、金と原油そしてユーロは上昇するなど、戦況にしたがった乱高下が続いて
いる。

ここまでの一連の流れで、「運用」という観点から学び取れるのは次の2点であ
る。

まず「噂で買って、事実で売る(Buy on Rumor, Sell on Fact)」とされるよう
に、市場価格は常に先を織り込みながら展開してゆくということ。そして今回のN
Y株式に見られたように、市場は同じ材料に対して180度異なる反応をすること
もある、という2点である。

後者を少し説明すると、3月初旬までのNY株式市場は、「開戦近し」を連想させ
る米英の動きには、下げで反応していた。そしてその動きに独・仏が抵抗し、「開
戦が遠のく」と上昇するということを繰り返していた。これは米英が国連安全保障
理事会の場で独仏を説得できず、いたずらに時間だけが経過してゆくペンディング
状態を、株式市場が嫌気したものである。それが「米英は国連決議を経ずとも開戦
を決意」と受け止められる状態(つまり事態の旗色が鮮明になった状態)が生まれ
たところで、市場の反応は逆になった。同じ「開戦」を今度は不透明要因を払拭す
る好材料として株式市場は受け止めたわけだ(もちろん好材料とする背景には先に
取り上げた「楽観論」が前提としてあった)。このように先を見通すにあたり、判
断材料の好悪の“色分け”を求めるのも株や金などの市場の特徴といえる。

足元の戦況は、ご存知のように物量(に加え質的にも)にものをいわせた米英軍の
攻撃に、一時は楽観論の修正に向かった市場の反応が、また強気に傾きつつあると
いうところか。したがって、ヘッジを旨とする金市場は再び330ドルを割り込ん
できた。

市場のほうは、すでに戦後を織り込み始めている一方で、やはり目先で起きる事態
への反応もまだまだ続く。

制空権を完全に握っている米英軍の優勢は、言うまでもないだろう。バクダットを
包囲した後の展開が果たしてどうなるか。山場が近いとされているが、市街戦に入
る前に睨み合いがあるのか否か。その時点で、当初国防総省が目論んだイラク・サ
イドの自壊作用が進めば、一気にこの戦いは終結に向かう。それが楽観シナリオで
あるが、ことはそう単純でもない。市街戦となれば、これは指摘されているように
双方の人的被害、とりわけここまで比較上は軽微な範囲で収まっている米英サイド
のそれは急増しそうだ。それによる米国内世論(停戦)の高まりをイラク・サイド
は狙っているとされるが、もともと軍部出身ではないフセイン大統領は説得には応
じず、自軍兵士の人的被害もいとわず戦いに望むと見られている。

そこでの最悪のシナリオは、イラク軍が追い詰められた際に化学兵器などいわゆる
「大量破壊兵器」を使うことだとされる。もともとは、その存在の是非に関する、
「処分したので無い(イラク)」、「嘘だ在るだろう(米)」という“水掛け論”
の挙句、期限切れでの戦争突入だけに、米英サイドにとっても国際世論を考える
と、それは自らの正当性を証明することにはなるが、やはり避けたいシナリオでは
ある。そしてこれは金融市場にとっても起きて欲しくないシナリオでもある。

金市場は、NY市場でファンドに動きが出ている。イラク開戦直後から、売り残
(ショート・ポジション)が急減している。約3万枚、重量換算93トンあったも
のが、3月25日時点で約1万5000枚、同49トンと半減した。これはファンド
が330ドル割れを買戻しのタイミングと捉えたものと思われる。それはそれで、
200日移動平均線(現在329ドル)下値支持を表すものではある。ただし、そ
の後、「取組」と呼ばれる未決済の取引量が増えることなく、むしろ減少している
のが気に掛かる。これは金市場参加者が完全に様子見に徹し始めていることを表
す。「薄商い(取引量が少ない状態)」のなかを、僅かな売りで価格が変わること
も考えられる。(4月4日記)


金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎
※本レポートは執筆者の個人的な見解を述べたものであり、実際の投資にあたってはお客様ご自身にてリスクをご判断ください。


http://www.sumitomo-gold.com/market/index.html

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