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東京 4月3日(ブルームバーグ):アジア各地で、新たな金融危機の芽はないかとデータ収集に余念のないアナリスト諸君。まず自分の体温を測った方が身のためかもしれない。
多数の死者が出ている重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大が、次第にアジア経済や金融市場にも影響を与えつつある。飛行機やレストラン、ホテル、一部オフィスビルまでもが空っぽになるなかで、エコノミストの間ではことしの成長率見通しを下方修正する動きが広がっている。モルガン・スタンレー・アジアのチーフエコノミスト、シエ氏は、SARSはアジア地域に、 1997−98年の「金融危機以来、最も深刻な事態をもたらすものだ」と語る。
90年代後半の金融危機当時、投資家は経済はいかにして「アジア流感」に罹患したかを話題にした。この場合は純粋に金融「疾患」だった。だが今回は正体不明の新型肺炎という本物の疾病が、世界経済低迷やイラク戦争、テロ懸念ですでに体力の落ちているアジア経済に襲い掛かっている。アジアにとって、SARS感染問題はまさに最悪のタイミングで起こったといえよう。
香港政府の対応に疑問
当局がSARSの感染拡大を防ぐ方法を発見すれば、投資家は安心するのかもしれない。しかし実際には、感染経路も正確には把握できず、発祥地も特定されていない。保健当局者は恐らく中国が発祥とみているが、同国による感染状況の発表が遅れ、治療法確立に影響を与えている。潜在的には、SARSはアジア金融危機以上に恐ろしいものとなる可能性もある。投資家のアジア離れを回避したいなら、各国政府はSARS対策に持てるエネルギーと資源すべてを注ぎ込むベきで、問題を隠そうとしたり、否定したりすべきではない。
香港では、英金融最大手のHSBCホールディングスなどの企業が社員に自宅待機や他国での勤務を命じ、観光業は停止状態、学校は閉鎖。米CNNテレビは医療用マスクを装着する香港市民の姿を放映した。どれも投資家には心穏やかならぬものだ。こうした状況は経済や金融市場に大きな打撃を与えるが、その責任の多くは政府にある。投資家はSARSを脅威に感じているが、同時に香港政府の何ともお粗末な対応に落胆してもいるのだ。香港政府の対応が2週間遅れたことに関し、その能力と責任について疑問の声が上がっている。
今回の疾病危機に対し香港政府が信頼に足りる対応を取れなければ、投資家は政府が市場の低迷に歯止めを掛けると信用することなどできようか。香港は今なお投資に格好の場所とアピールしても信じるだろうか。香港政府が中国政府の指示ではないと言ったところで、投資家やマスコミは信じるだろうか。
中国の出方
もっと理解できないのは、中国政府の対応だ。同国政府は今月1日、SARSについて詳細を公表する義務はないと発表、同国は何を隠しているのかと疑問の声が広がった。世界保健機関(WHO)に対し、SARSの発祥地とみられ、発症例が最も多い中国広東省訪問の許可が下りたのは2日になってからのことだ。それ以上に、中国で何件の発症例があるか定かではない。同国政府は少なくても1172件の発症例を報告、これまでの取り組みを説明したが、投資家がその数字を疑うのも無理はないだろう。
SARSの感染はシンガポール、ベトナムなど多くの国に広がっており、投資家は動向を注視している。市場が政府当局の対応が不十分と判断すれば、アジア経済への海外資金の流入は細るだろうし、一部既存の資金が逃避する可能性もある。SARS騒動がなくても、アジアには97年に似た冷たい風が吹いている。今回は、もともと風邪をひきそうだったアジア経済が、偶然にひどく厄介な疾病危機をも抱え込む形になる。
資産運用会社ブリッジウォーター・アソシエーツで340億ドルを運用するデリオ氏は「これまでのところ市場の反応は地域的なものだ。それが適切かどうかはやがて判明するだろうが、はっきりしているのは、SARSは現在のところ織り込み済みとは思えず、今後マイナスの影響を持ち得るということだ」と話している。(ウィリアム・ペセック・ジュニア)
(ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。同氏の見解は彼自身のものです)
東京 William Pesek Jr. 東京 小針 章子 Akiko Kobari