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スイス企業、脱「サラミ戦略」――日経金融スクランブル
スイスに本拠を置く国際有力企業の間で、「過去の負の遺産」を一括処理し巨額の赤字を計上するケースが相次いでいる。
昨年来、ジワジワと企業業績が悪化、株価がジリジリと下げる負の連鎖に見舞われ、スイス株指数(SMI)は2002年初めの6000スイスフラン台から今月上旬には3800スイスフラン割れと4割近く下落した。
前期決算での損失の一括処理をバネに今期は大幅な黒字を出し、「V字回復」を印象づけるのが企業の狙い。株価が昨年来の下降トレンドに終止符を打つきっかけとなるか、注目されている。昨年来、市場関係者の間で急速に広がった新語がある。
「サラーミ・タクティック(サラミ戦略)」。サラミ・ソーセージを薄く切るように対策を小出しにする企業を揶揄(やゆ)したものだ。業績が悪化するたびに追加の合理化策発表を繰り返す経営陣に向けられた、投資家のいら立ちの声とも言える。最近では、記者会見などの席で「これはサラミ戦略ではありません」などと経営者が使うことも珍しくないほど使われる。日本流に言えば「問題の先送り」だが、これと決別しようという企業の動きが急速に出始めた。
医薬品大手ロシュの決算はその典型。2002年12月期の年間決算は、医薬品事業など本業は順調だったが、最終損益は40億2600万スイスフラン(約3500億円)という大幅な赤字決算となった。保有株式の含み損52億スイスフラン(4500億円)などを一括償却したことが響いた。このほか、ビタミン事業の売却損16億スイスフランや同事業の米国での独禁法違反にからむ罰金18億スイスフランなど、同社にとっては懸案事項にからむ損失を一気に落とした格好。一括処理した損失は合計で8000億円近くにのぼった。好決算が予想されていただけに、巨額の赤字決算が明らかになった2月末から株価は一段安となった。もっとも動揺が収まった後は、問題の一括処理を評価する声が強まり、株価は急回復している。
同じく大幅な赤字決算となったエンジニアリング大手ABBも決算後の株価は堅調。2002年の年間決算は最終損益が7億8700万ドル(約940億円)の赤字だったが、経営破たんの原因になるのではないかとさえ言われた米国でのアスベスト(石綿)訴訟で和解を実現。関連損失として4億2000万ドルの引当金を計上した。このほか金融部門の売却に伴う損失1億3500万ドルなど合計で8億5300万ドルにのぼる損失を一括処理した。
「負の遺産の処理」という言葉を使ったのは総合金融大手クレディ・スイス・グループのジョン・マック共同最高経営責任者(CEO)。2002年通期の最終損益は34億スイスフラン(約3000億円)の赤字だったが、証券部門のクレディ・スイス・ファースト・ボストン(CSFB)が抱えていた訴訟関連費用や保有資産の評価損を一括計上した。
いずれも経営環境の厳しかった前期決算で思い切った損失を計上し、2003年は大幅に改善する「V字回復」を狙っている。日本でもかつて日産自動車が使った手だ。
現社長のカルロス・ゴーン氏が経営のかじ取りを担った直後の2000年3月期。日産は7111億円にのぼる「負の遺産」を特別損失として処理、6844億円という巨額の最終赤字を計上した。翌期には一転して3311億円の過去最高益を上げ「復活」を見せつけた。ゴーン改革が理念や計画だけではなく、数字に結び付くことを鮮烈に印象付けた。
収益基盤が大きく揺らいでいるABBやクレディ・スイス・グループが同様のV字回復シナリオを描いているのは間違いない。「最悪の時期は終わった」というABBのユルゲン・ドルマン会長の言葉が端的にそれを示している。
収益基盤の立て直しに向けた企業の抜本的な対策に、市場はおおむね好意的。
ロシュやクレディ・スイス・グループといった主要構成銘柄の株価が上昇に転じたことで、SMIも一時4400スイスフラン台に戻している。問題の先送りと決別したスイス企業の「復活」は案外早いかもしれない。(チューリヒ=磯山友幸)