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欧米の失業率が悪化する傾向をみせている。欧州ではドイツの悪化が顕著で今年三月まで五カ月連続で10%を突破、雇用対策が政府の最重要課題になっている。他のユーロ圏諸国でも輸出産業の不振を背景に軒並み前年を上回る水準。一方、米国でも大手企業による大規模な人員削減の動きが再び活発化している。世界経済は、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS、サーズ)の脅威にさらされており、今後も主要国の雇用情勢は予断を許さない。(井伊重之)
ドイツでは、景気低迷を背景に、シーメンスなど大手企業による人員削減が相次ぐ一方、雇用の受け皿となる新規産業の育成も遅れている。失業者数は昨年半ばから四百万人を超える水準で推移している。
シュレーダー政権にとっても雇用対策は深刻な問題となっており、ドイツ政府は、住宅建設促進による景気刺激を図ろうと、総額百五十億ユーロ(約二兆円)を投じて低利融資制度の創設を打ち出した。さらに、五十五歳以上の失業者を対象にして、失業保険の給付期間を延長する措置を講じることを決めた。
しかし、その一方で財政赤字も増加基調を示しており、赤字拡大も避けなければならない。ドイツの場合、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以下に抑制するユーロ参加国の規定に抵触する可能性もあり、難しいかじ取りを迫られている。
ドイツ経済低迷の理由の一つには、最近のユーロ高もある。イラク情勢の緊迫化に伴って投資資金がドルからユーロに向かい、今年三月までの一年間でユーロはドルに対して約二割上昇した。ユーロ高でユーロ圏の企業が東欧などユーロ圏外への生産移転に動いているほか、域内の輸出企業も低迷している。
この結果、ドイツ同様、ユーロ圏のフランスでも経済は停滞、失業率は9%台の高水準で推移している。航空会社のエールフランスが従業員の二割削減を打ち出すなどのリストラが続いているが、景気低迷による企業のリストラが雇用不安を招き、消費がさらに落ち込む、という悪循環に陥りつつある。
一方、米国でもイラク戦争に続くSARSの影響などで、景気の先行き不透明感が強まっている。昨年後半から失業率は5%台後半で一進一退を繰り返しており、民間調査機関の家計調査では再就職の難しさを指摘した人が30%を突破、「雇用なき景気回復」といわれた一九九四年以来の高水準を記録した。
産業界では半導体大手のマイクロン・テクノロジーが十八年ぶりに人員削減を実施するなど、IT(情報技術)関連を中心とする人員削減の動きが続いている。最近では小売業や観光業のリストラも加速。雇用情勢の先行指数とされる失業保険の新規申請件数も雇用悪化の目安とされる四十万件を四月末まで十週連続で上回った。
米国の有力シンクタンクの国際戦略研究所(CSIS)は、イラク戦争が一カ月以内に終結した場合は、米国の成長率は上方修正されるとみていた。ただ、イラク戦争は短期で終結したが、今度はSARSが世界経済の新たな不安要因として急浮上。米国経済が低迷に向かえば、二十年ぶりの世界同時不況に陥る懸念もある。日本を含めた主要国の失業率は今後も高止まりする可能性が高い。
http://www.sankei.co.jp/news/030512/morning/12kei003.htm