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[T]米国の住宅ローンブームによる消費バブルは崩壊へ
● 米国経済も構造調整が必要
米国経済は10年遅れで日本経済を後追いしている。株価、長期金利、設備投資、消費といった主要な経済指標を10年ずらして並べると、米国が10年前の日本を追いかける形となっている。これは今回の米国の不況が循環的な問題ではなく、構造的なものであることを示している。
ただ、政策金利については米国の下げ方が早く、米国の金融当局の方が先に手を打ち尽くし、低金利政策が限界に近づきつつある。金融緩和にもかかわらず、マネーサプライの伸びは急速に落ち込んできており、低金利政策の限界を示している。最近では金融政策の目標を金利からマネーサプライに切り替えようという動きも見られる。これは将来の金融危機、おそらくはファニーメイ、フレディマックといった政府系機関の危機が起きた場合への備えという意味を持つのではないか。
● 逆利回り革命の着実な進展
国債利回りが下がり続けるなかで配当利回りが上昇するという逆利回り革命が進展しつつある。4月現在、米国で配当利回りが2.43%に対して、国債利回りが3.83%、英国では各3.8%、4.3%である。日本は配当利回りが1.18%とすでに国債利回りの0.6989%を上回っているが、配当利回りの水準は米国の半分、英国の3分の1でしかない。しかも、国債利回りが現在の異常な低水準にとどまり続けるとは考えにくい。
世界的には国債利回り3%、配当利回り5%という方向に向かっていこう。仮に配当性向50%とすると、益回りで10%、PER10倍あたりを目指していくことになる。現在のS&P500種の予想利益ベースのPERは16倍だから、米国の株価はなお割高といわざるを得ない。
● 州地方財政の赤字が急激に悪化
米国の州地方財政が急激な赤字に見舞われている。米国のほとんどの州では赤字の継続は許されず、赤字の翌年には黒字化することを財政均衡法で定められている。現状ではその達成も難しい状況だ。連邦政府も急激に赤字化しているが、これはキャピタルゲイン税収の減少による歳入の落ち込みが大きい。
● 家計部門の過剰借り入れ
米国経済の主要3部門の資金調達状況を見ると、財政赤字の急拡大を受けて、政府部門が3950億ドルと急増している。一方、バランスシート調整を進める非金融法人部門の市場からの調達額は1200億ドルと縮小している。これに対して、家計部門の資金調達額は直近で8831億ドルと政府部門の借り入れを大きく上回る最大の借り手となっている。これは住宅ローンの借り換えを中心にローンバブルが形成されたことを示している。こういった家計部門の過剰借り入れという状況はいずれ是正されざるを得ない。
● 設備投資を増やせない米企業
米企業の企業収益はどうなっているのか。国民所得ベースの非金融法人の税引き前利益は98年の4600億ドルから2002年の3158億ドルへ、税引き後利益も同様に3059億ドルから1883億ドルといずれも着実に落ちてきた。だが、逆に配当は2400億ドルから2800億ドルへと増えており、企業が配当レベルを下げないため、内部留保が赤字化している。これは投資家の配当要求がいかに強いかを示していると同時に、表面上は利益を出したことにして配当しているというアメリカの企業会計の問題を映している。
米国企業収益にまだ充分反映されていない、もうひとつの深刻な問題は、企業年金の積み立て不足である。例えばGMは株安の影響などで百数十億ドルの積み立て不足になっている。積み立て不足の回復には猶予期間が設けられていて、5年くらいかけて企業はこの穴埋めをすればいいことになっているが、それでもGMは昨年、株主資本の約70%相当の引き当てを必要とした。
アメリカだけでなく、年金は世界的に問題になっていて、果たして10年後に企業年金というものが存在しているか、疑わしくなってきている。これらの事情を勘案すると、米企業には当分設備投資に資金を回せる余裕はない。
● 急ブレーキがかかる雇用の伸び
財政赤字の拡大でリストラを急がなければならなくなった州地方政府を中心に、政府部門の雇用の伸びが急激に鈍化している。たぶん今年はマイナスの伸びになっていくと考えられ、短期的には経済へのマイナス効果となろう。他方、民間ではよりサービス業的な飲食業の雇用の伸びの悪化が小売業よりも目立っているのが今回の特徴である。サービス経済化して初めてのサービス不況に入ってきている。これまで経験のないサービス不況という事態にうまく対応できるかどうか、が問題である。
● 消費バブルの崩壊と自動車不況
消費バブルの象徴である、自動車販売の急増は現在やっと年率1600万台という、通常の天井の水準に戻ってきた。今後は消費バブルの崩壊に伴い、販売台数は1200万台程度まで落ち込むのではないか。自動車不況の深刻化は避けられないだろう。現に社債市場では、フォードやグッドイヤーが倒産するのも時間の問題ではないかとの議論が出てきている。日本車の対米輸出も最近急減し始めている。
● 急増した住宅ローン
住宅着工件数は現在年率160万戸だが、住宅着工は自動車販売と連動性が高く、自動車と同じように、今後100万戸ぐらいまで落ちていくのではないか。住宅ローン借り換えの急増が住宅投資や自動車など高額商品を中心にした消費ブームを支えてきたわけだが、2月末にグリーンスパン議長の議会証言のなかに注目されるコメントがあった。
そのなかで、従来2000億ドル程度といわれていた、いわゆるキャッシュアウトは実際には7000億ドルぐらいだったのではないかとの数字を挙げている。連銀はグリーンスパン発言を裏付ける具体的統計を示しているわけではない。だが、資金循環統計でみると、2002年第4四半期の住宅ローン残高の増加額は年率7992億ドルと急増した。これに対して、住宅投資分の増加額は4164億ドルと約半分でしかない。差額の3828億ドル(GDP比4%弱)が住宅以外の目的の自動車や高級家具、カードローンの返済に使われたと考えられる。
ここでもう一つ注目されるのが、家計部門の定期預金が増えていることだ。この借りすぎて使わずに定期預金で預けてある分が、イラク戦争が終われば引き出されて消費に回るとの楽観論もあるが、厳しい雇用情勢を考えると、そうならないのではないか。
● 住宅金融公社への高まる懸念
住宅ローン返済が難しい消費者が出てくると、ファニーメイやフレディマックといった住宅金融公社の経営危機の可能性が出てくる。住宅金融公社のリスクの第一は、金利の変動に脆弱な体質であることだ。例えば、短期金利が上昇して、運用利回りと調達コストのスプレッドが開いて逆ざやになると、自己資本比率が2.5%と商業銀行の平均11%に比べて低く、ギアリングを効かせた経営をしているファニーメイなどは、簡単に赤字化してしまう。
ファニーメイ債等の政府系機関債(GSE債)の買い手は、欧州や中央銀行を中心とするアジアの投資家だが、こういった海外の投資家がGSE債を売却し出したら、GSE債市場は大混乱し、住宅金融公社のファイナンスも支障をきたすことになる。
[U]日本経済再生のシナリオ
● 家計所得を奪うゼロ金利
国民所得統計によると、ネットで518兆円の有利子資産を保有しているにもかかわらず、家計部門は2001年に7.1兆円の利払い超過であった。これがゼロ金利のもたらした問題である。
3%程度の成長の経済に戻るには、金利は、92年の水準、支払い金利で7.6%、受取りで5.2%程度の水準に戻らなくてはならないのではないか。仮に2001年の有利子資産.負債にこの金利水準を適用して計算し直すと、家計部門の利子所得は19兆円の受取り超過となり、現実の7.1兆円の支払い超過と比べて26兆円の改善となる。
26兆円がゼロ金利で家計部門から奪われた所得といってよいだろう。これは帰属家賃を除いた後の消費250兆円の10%強に相当する。この大きさの金利所得が復活すれば、サービスを中心に消費が大きく伸びる可能性がある。
● ゼロ金利からの脱却が必要
企業会計でいえば、営業利益に近いコンセプトである国民所得統計の営業余剰を見ると、銀行・保険業のそれが2001年は18兆円であった。製造業全体の12兆円よりも大きい。単純化するために、この18兆円を銀行による営業余剰とすると、現状ではこれがまるまる不良債権処理に使われている。
そこで仮に不良債権処理の問題がないとすると、第一に営業余剰18兆円の40%に当たる7兆円の法人税収があるはずで、また二番目に、税引き後利益11兆円の自己資本繰り入れに伴い130兆円相当の信用創造が可能になる。三番目の問題としては、不良債権処理のために引当金を積んでも、キャッシュフローがなくなるわけではなく、銀行は手元に残った18兆円のキャッシュフローを国債の買い入れにしか使えないという状況がある。
そもそも不良債権というストックの問題をフローの収益で解決しようというところに今の不良債権処理策の無理がある。デフレ下では、銀行を国有化し、不良債権を持つ銀行と正常債権だけの銀行に分ける以外に不良債権問題の抜本的な解決策はない。
● 国際収支の赤字化が転機のカギ
ゼロ金利が続く限り過剰の整理は進まず、デフレ圧力は払拭されない。前向きな展開はありえない。ゼロ金利からの脱却こそが必要だが、その鍵となるのは国際収支の赤字化であろう。
経常収支赤字化の裏側にある部門別の貯蓄投資動向をみていく。最大の問題は政府部門の赤字が急拡大していることだ。通常投資超過で赤字の非金融法人企業部門は投資の抑制で若干の黒字となっているが、世界不況に伴うキャッシュフローの減少で再び赤字化するだろう。このところ急速に低下している家計部門の貯蓄超過も不況に伴う所得減少で低下が続くだろう。つまり日本全体として、拡大が続く財政赤字をファイナンスしきれなくなる時期がいずれやってくるということで、これは経常収支の赤字化を意味する。
現実の経常収支の動向を見ていくと、世界的な不況による輸出の減少で貿易サービス黒字が2004年にはゼロになる可能性が大きい。拡大してきた所得収支黒字も世界不況に伴う配当の減少や世界的な金利低下により金利所得の減少で大幅に落ち込むことになるだろう。予想される貿易黒字、所得収支の減少で、来年中にも経常収支が4-5兆円の水準になっていくのではないか。
● 金利上昇で日本経済の再生
家計部門の対外政権投資を中心とした海外への資本流出と経常黒字の合計がいつマイナスに転じるか、が円安・金利上昇によるゼロ金利脱出の鍵となろう。そのときから、急激に機関投資家や事業会社の資本流出が加速してくるはずで、これが一段と円安を加速し、資本流出を促す。このとき金利が上昇し、国債バブルがはじけることになる。これはそこから本格的に日本が良くなっていくという意味で、前向きの展開である。
整理すると、90年代は結局アメリカの消費ブームに助けられ、日本経済も底割れせずに済み、問題の先送りも可能だった。しかし、米国の消費バブルがはじけ、下支えの条件がなくなると、日本も本格的に改革に向かわざるを得ない状況に追い込まれる。そういう意味では、明るい展望が開けてきているといっていいだろう。
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http://www.nier.co.jp/kijikanri/sekaikeizai/sekaikeizai-00505.shtml