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<第31回>放っておくと7000円台は単なる通過点に
日経平均が先週、一時、8000円の大台を割り込んだ。このことは8000円をサポートラインと信じ込んできた投資家のスタンスに重大な影響を及ぼさずにはおかない。
押し目買いのセンチメントが消え、代わって戻り売りの姿勢が強まる。政府、与党はすかさず緊急対策を打ち出したが、「時すでに遅し」である。
一方、小泉首相は、「王道を行く。即効薬、奇策、万能薬はない」(14日)。経済危機への懸念を背景に自民党内では政策転換を求める声が高まっているが、当の首相は逆に自説のトーンを強めている。しかし、邪道、奇策の類でも良いから今となってはとにかくインパクトのある対策を打たないと市場が危ない。政策の先送り、後手後手の対応を棚に上げていまさら「王道」といわれても困る。
ここにきての株価の急落は、3月決算を目前に控えた銀行、事業会社にとって大きな痛手である。期末の日経平均が8000円を割り込むことになれば業績、バランスシート上に思わぬ狂いを生じ、来期以降の経営戦略にも少なからず影響が及ぶことになろう。企業がヒト、モノ両面で投資を抑制することになれば、所得環境の悪化で低調な個人消費はさらに足取りを重くし景気の落ち込みに拍車をかけることが考えられる。
当面の株価は、そうした経済の不透明感に加え、戦争という、誰にも予測がつかない、もう一つの不確実性に挑戦して行かなければならない。株価の低落が景気の低迷、デフレの進行、金融システムの崩壊危機を招き、それがまた株価の急落を呼ぶ。この悪循環が起こっているときに世界の政治、経済の枠組みに亀裂を生じかねない戦争が勃発したら日本の経済、金融はいったいどうなることか。
これが、今、多くの投資家や市場関係者が抱いている不安である。しかし、小泉純一郎首相をはじめ現政権内部からは、あまり深刻な危機感は伝わってこない。
言葉尻をとらえるようで恐縮だが、先日、竹中平蔵経済財政・金融担当大臣はテレビ番組で「最近の株安は主に外的要因(戦争危機)によるもので景気の悪化を反映したものではない。国内総生産(GDP)は02年第4四半期まで4期連続のプラス成長で実体経済は悪くない」と言っていた。直後に「だからといって株安を放置して良いという事ではないが」と付け加えたのはさすがだが、誤解を恐れるならもっと本質的なところで説明を加えるべきではなかったのか。
話を真っ正直に捉えれば竹中大臣は今、株を買うのに昨年の経済を見て判断するのか、と疑われてしまう。株価の説明変数としてGDPを持ち出すなら半年、1年先の予測値を用いて欲しかった。また、デフレの進行過程で実質GDPだけを取り上げて景気を説明するのも問題だ。われわれが日常生活で肌で感じる景況感は、あくまでも名目値上のことで実質値ではない。もちろん、株価と密接な相関関係にある企業業績も名目ベースであり、最近は名目GDPのマイナス成長に頭を押さえられ、売上げ不振に悩んでいる企業が過半である。
名目GDPは5年前の98年にマイナス成長に転じ、02年までプラスとなったのは2000年の0.8%だけで、残りの4年はいずれもマイナス1.2〜1.4%だった。この事実を見れば現状の経済、金融がいかに萎縮し、傷んでいるかが素人目からも推察できる。日本経済が危機的状態にあるという財界、世論の声は決してオーバーではないはずだ。
悪いことに日経平均は8000円を割ると6000円台までチャート上の大きな節目がない。放っておくと7000円台は単なる通過点になるおそれがある。こんなときに株を買ってくれる人は貴重だ。
企業が自社株を買うには本来、厳格な規制、監視があってしかるべきだが、規制を緩和、撤廃するというならそれも良い。日銀がお金を刷って銀行の保有株や市場の余剰株をETFに仕立てて買い上げるのもあえて反対はしない。公的年金の株式組み入れ枠の拡大も効果があろう。年金の代行返上など制度上から来る売り圧迫や意図的な売り崩しを防ぐのも有効な手立てだ。
とにかく、今、大事なのは市場が危機的状況に陥っていることを真摯に受けとめ、非常的手段も含めてあらゆる市場対策を断行することである。いまさら「王道」を模索したところで「時すでに遅し」、株価は待ってくれないのである。
[2003年3月17日更新]
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