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所管分散が壁に
国内で初めて実用化された燃料電池車、トヨタ自動車「FCHV」とホンダ「FCX」。小泉純一郎首相が出席するなど昨年末の納車式は鳴り物入りで行われたが、頻繁に使われているはずの東京・霞が関で見かける機会は少ない。燃料充てんなどに関する法規制の未整備が、その一因になっているようだ。
正午きっかりに、敷地の外で待機していた二台の中型トラックが経済産業省の正門をくぐり、中庭に入ってきた。積んでいるのは簡易型の水素供給設備。FCHVやFCX専用に用意された「移動式スタンド」だ。
設営にかかった時間は四十五分。「三カ月たって作業員が慣れ、最初のころより三十分も短縮できた」と、運営を任される日本酸素の白根義和・水素プロジェクトマネジャーは話す。午後一時前、最初の一台が水素の充てんにやってきた。
トヨタのFCHVは経産省、国土交通省など四省庁に、ホンダのFCXは内閣府に納車されたが、計五台の燃料電池車はすべて経産省内の移動式スタンドで燃料を入れる。充てんは一回十分から二十分ほどだ。
当初はほぼ連続して五台の充てんをこなす忙しさだったが、この日はわずか二台。もともと台数が少ない上、珍しさも薄れている。燃料を充てんできる場所はここ一カ所だけで、午後三時には店じまいして撤収作業が始まる。燃料電池車に乗るのは不便との印象は避けられない。
スタンドを固定式にして、終日充てんできるようにすれば利用が増える可能性もある。しかし固定式に許可は下りなかった。東京都が慎重だったためだ。現行の高圧ガス保安法は燃料電池車を使う経産省が所管だが、スタンド設置の許認可権は都道府県知事が握る。
高圧水素ガスの取り扱いにはこのほか、国交省、環境省、総務省などの規制も複雑に入り組んでいる。五台の燃料電池車は現在、トンネルを走行できないほか、地下の駐車場にも止められない――といった制約も受けている。
経産省の移動式スタンドは夜間、東京・江東区にある日本酸素の子会社で保管され、毎日、霞が関との間をトラックで往復しないといけない。燃料電池車は二酸化炭素などを排出しない究極の無公害車だが、スタンドを運ぶトラックからは温暖化ガスが出る。
日本酸素は「漏えい検知器をつけ、設備に防爆構造を施せば水素は安全な燃料」と主張し、固定式スタンドに替えてもらえるよう関係省庁に要請中だ。しかし複数省庁にまたがる規制の網をほぐしてもらう調整は難航しているという。
百社を超える民間企業で構成する燃料電池実用化推進協議会は二月、水素を入れる容器の仕様やインフラ整備など二十八項目の規制緩和を政府に要望した。経産省は将来の燃料電池社会に備えて「リーダーシップを発揮する」との姿勢だが、規制緩和のスケジュールはまだ示されていない。
ホンダが米ロサンゼルスに納車したFCXは日常的に使用されているという。日本に比べ燃料電池車にかかわる法整備が進んでいるのと決して無縁ではない。安全性の確保は最優先だが、二酸化炭素を出しながら無公害車を走らせるようなナンセンスだけは避けるべきだろう。
(中山淳史)