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日経産業新聞
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■ 企画「企業と戦争」を1面に連載 2003年3月24日
24日(月)から1面に企画「企業と戦争」を連載しています。イラク開戦の3週間前、TDKのSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)グループロジスティクス部長は欧州統括販売会社に「電子部品の在庫を半月分だけ積み増ししてほしい」という指示を出しました。湾岸戦争の時は、手当たり次第在庫をかき集めましたが、今回は12年前の焦りはありません。SCMで納期や在庫を即時管理する仕組みが出来上がっており、集積データから「半月分の在庫積み増しで対応可能」との結論が出たためです。SCMの進歩など、この12年間に起きた変化が、ハイテク企業の対応を、湾岸戦争時と様変わりにしています。日立製作所でSCMなどのコンサルティング事業を手掛ける清水盾夫・事業部長は「イラク戦争? 有事は常に起きている。企業にとっては毎日が戦争ですよ」と強調します。湾岸戦争と比較しながら、企業の戦争への対応を追います
イスラエル生まれの半導体に世界のパソコン業界が注目している。
十二日、米インテル( http://www.intel.co.jp/ )が発売した「セントリーノ」がそれだ。無線でのネット接続を容易にし、クレイグ・バレット最高経営責任者は「これで情報技術(IT)新時代を切り開く」と意気込む。紛争・戦争リスクの高い同国の北部、ハイファ市にある研究所が社内の厳しいコンペを勝ち抜き開発の主導権を握った。
ハイファ研究所の開設は第四次中東戦争開戦の翌年の一九七四年。九七年には世界市場を席巻した「MMXペンティアム」を送り出した。軍事技術を源流とする優秀な人材が競争力を生む。工場を含め同国での社員数は五千人に達した。
九一年の湾岸戦争。イラク軍によるミサイル攻撃の最中も各拠点は操業を続けた。社員の徴兵を前提に採用計画を組み、拠点内に臨時託児所を置いて人員を確保した。
戦争リスクの高い国への投資には異論もある。ただ同社は人命を守り事業を継続させる危機管理の先進企業としても知られる。世界各地の工場は同じ設計で統一され、非常時にはすぐに代替できる。優れた技術を手に入れるためには、リスクから逃げず、むしろ対峙(たいじ)して徹底的に対策を講じる。この姿勢が同社を世界最大手に引き上げる要因になった。
中東戦争や湾岸戦争にさかのぼるまでもない。二〇〇一年九月の米同時テロは米企業を鍛えた。
一位ウォルマート・ストアーズ( http://www.walmart.com/ )、二位サウスウエスト航空、( http://www.southwest.com/ )四位デルコンピュータ( http://www.dell.com/jp/jp/dhs/default.htm )――。
米フォーチュン誌が選んだ二〇〇三年版「最も尊敬できる会社」ランキングのうち、三位の投資会社バークシャー・ハザウェイを除いた事業会社上位三社には共通点がある。同時テロ後に競争力を一段と高めた「テロ克服企業」なのだ。
「倉庫の域を超えた芸術品」と競合各社が舌を巻くウォルマートの物流拠点。時速三十二キロの超高速コンベヤーの上を段ボール箱が走り回り、一秒間に六個の割合で店舗ごとに仕分けする。全米で百カ所以上の自社物流網で同時テロやストによる港湾封鎖の混乱を難なく乗り切り、エクソンモービルを抜いて世界最大の民間企業に浮上した。逆に物流基盤の整備が遅れたKマートは、経営破たんに追い込まれた。
サウスウエストは大都市空港に旅客を集めたうえで地方都市に運ぶハブ・アンド・スポーク方式と決別、発着料の安い郊外空港を点と点で結ぶ独自の手法で低コスト経営を実現。どん底の航空不況の中、昨年十―十二月期も唯一黒字だ。
デルのマイケル・デル会長は「(同時テロなど)過去の混乱でも十分対処できたし、遅滞なく製品を供給できた」と胸を張る。製品の平均在庫日数は業界最短の四日。年内に三日を目指す。
五月には新システムが稼働する。部品の所在をネット上で常に把握し、物流拠点に届く日時をはじき出す。部品を運ぶ航空便が欠航になると、担当者は他の部品会社に瞬時に発注できる。在庫日数約三十日のヒューレット・パッカードをさらに突き放す構えだ。
テロの不安は米国以外にも広がり、安全のコストは「税金」のようにすべてのグローバル企業にのしかかる。ウォルマートなどの事例は有事への対応力が企業の優勝劣敗を決めることを示す。
米国三菱商事の相原宏徳社長は「戦争やテロを体験した米経営者は自らの責任で危機管理プランを練り実行する訓練ができている」と指摘する。日本企業はどうか。イラク戦争が長期化すれば世界景気への打撃は避けられないが、ミクロで見ると企業間格差がさらに広がる可能性が大きい。
(ニューヨーク=篠原洋一)=おわり