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日経平均8千円割れですべきことは？
2003年3月14日
イラク情勢の緊迫化をきっかけに日経平均株価はついに８千円割れ。政府・日銀による株価対策を期待する声は高まっているけど、本当にあてにしていいのかな？私たち個人投資家がすべきこととは？
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米国や英国などが、国連安全保障理事会にて対イラク武力行使容認決議案を提示したため、早ければ20日にも米国などがイラクを攻撃するとの思惑が高まった。これをきっかけに日本株式市場は大幅下落。3月10日の日経平均株価は、一時7,975円と20年ぶりに8,000円を割り込んだ。いわゆる「イラク攻撃（の可能性）による株価下落」である。
国際情勢の変化による株価変動は珍しいことではない。米国などによるイラク攻撃が、湾岸戦争時のように米国の消費者マインドを萎縮させ、米国の個人消費・住宅投資の低迷につながるリスクは高まっている。米国の株価下落やドル安は、こうしたリスクを反映したものとも考えられる。
では日本の株価についてはどうだろうか。イラク攻撃による米国景気の低迷が輸出を通じて日本景気を下押しし、日本企業の収益が下方修正される可能性はある。また足元で高止まりしている原油価格や一次産品価格が、イラク攻撃によってさらに高騰するリスクもある。原油価格等の上昇は、原材料費用の上昇につながり、企業の利幅（マージン）の縮小につながる。例えば、マクロベースで原油価格と企業業績を比較すると、原油価格上昇の影響は１年程度のタイムラグを経て企業収益を下押しすることが知られている。
今年度の企業収益は、リストラ効果や輸出の好調を背景に大幅増益が見込まれており、来年度についても少なくとも年度前半までは増益基調を続ける可能性が高い。ただし米国を中心に輸出が大きく減速したり、原油高が続くようだと、日本の企業業績は来年度後半から減益に転ずる可能性が高まる。株価は企業業績の悪化をいち早く織り込む傾向にあるから、10日から始まった株価の大幅下落は、じつはイラク情勢の緊迫化だけでなく業績悪化を織り込んだ結果とも考えられる。
日経平均が一時8,000円を割り込んだ翌11日の新聞各紙は、株価下落とともに政府・日銀による株価安定化策の可能性を報じた。奥田・日本経団連会長が、日銀によるＥＴＦ・土地購入の必要性について見解を示したほか、与党が早期の03年度補正予算編成を求める声をあげたこともあって、読者も徐々にではあるが何らかの株価対策が実施されそうな雰囲気を感じたかもしれない。
金融システム不安が顕在化した97年秋以降、3月の株価下落対策は恒例行事化している。昨年の株の空売り規制を思い出した読者も多いことだろう。ただ、こうした株価対策は、一時的には株価を押し上げるものの効果が長続きしない。株価の形成要素は、基本的には企業収益の増減であり、規制等による株価対策は企業業績と無関係だからだ。
衆議院を通過したとはいえ、03年度当初予算は審議中であり、政府は今から補正予算による財政措置を打ち出すわけにはいかない。このため政府は、どうしても日銀の金融政策に依存しがちだが、日銀が株価対策としてできることは、金融市場に多量の資金供給をするのがせいぜいで、あわよくばＥＴＦ・土地購入くらいだろう。しかしＥＴＦの購入は、株の需給を引き締めるものの、基本的にはその場しのぎ策の一つでしかない。
債券の金利水準と配当利回りのスプレッドでみると、日本株は欧米株に比べ割安感が強まっている。個人投資家でもある読者がなすべきことは、あてにならない政府・日銀の株価対策を待つことではなく、輸出減速や原油高の影響に左右されず収益を作り出す個別企業株の選別だろう。もちろん3月末の配当を狙って株価変動リスクに見合った高配当利回り株の物色もおもしろい。多数が他人任せの状態にあるときこそ、自立した投資家に収益チャンスが訪れる。
マーケットエコノミスト 秋新作
提供：株式会社ＦＰ総研
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