★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 議論9 > 860.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
日銀券は日銀によって信用力が付与されているわけではありません
http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/860.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 4 月 11 日 20:20:37:

(回答先: 日銀の資産悪化を心配(経済に詳しい諸氏のレス希望) 投稿者 キャプテン 日時 2003 年 4 月 11 日 14:48:36)


キャプテンさん、こんばんわ。

日銀のバランスシートが悪化すれば、日銀が発行元(債務者)である日銀券への心理的な信用不安が生じることになりますが、金本位制ではない管理通貨制では杞憂に過ぎません。

まず、日銀券が金本位制で発行されている場合は、資産である金の保有量が減少していけば、減少に応じて発行残高が規制されると同時に日銀券に対する信用力が低下します。
そして、日銀券に対する信用力が低下したことで、紙切れである日銀券を金に換える兌換請求が増加します。国家が最終的な通用力を維持しているとしても、平価切下げ(単位通貨当たりの金量減少)が行なわれる可能性が高いからです。
平価切下げにより、100万円で1Kgの金が手に入るものが、800gになってしまったりします。
100万円は100万円ですから、1Kgの金を手に入れた人は平価切下げ後に125万円になり、800gの金しか手に入れなかった人は100万円のままです。

(私的な銀行がその信用力で兌換紙幣を発行している場合は、ただの紙切れになってしまう危険性もあります。早く兌換した人が助かり、遅れた人がババを引くことになります)

次に現在の通貨制度である管理通貨制の場合を考えます。
管理通貨制の日銀券は、金などの裏付け(価値実体)ではなく、国家の強制力によって通用しています。
日銀券の価値は、基本的には、財の供給量に対する流通量によって規定されます。
銀行による「信用創造」や同じ通貨が支払いで使われる頻度の違いがあるので、流通量は、発行残高よりもずっと多くなります。
財の供給量が同じ場合、流通量が増加すればインフレ(通貨価値減少)傾向になり、逆に減少すればデフレ(通貨価値増加)傾向になります。

だからといって、日銀券の価値や信用力が国内事情だけで規定されるわけではありません。管理通貨制でも、平価切下げに似た事情があります。
日銀券は、ベトナムの通貨ドンとは違って、国際的に通用するハードカレンシーで、外国為替取引もほぼ制限されていません。
日銀券の価値(信用力)が低下していると言えるのは、対ドルレートが120円から150円になるといった円安傾向に陥ったときです。
この場合は先ほどの兌換請求と同じように、日銀券をドル紙幣に換える動きが顕著になります。
100万円を1ドル=120円でドルに換えれば8333.33ドルになります。そして、1ドル=150円になったときに日銀券に戻せば、125万円になります。
円とドルの利子率が同じ0%だとすれば、円で保有していた人は100万円のままで、ドルにいったん換えた人は125万円に増えることになります。


このように、金本位制では発券銀行の資産が通貨の価値(信用力)に決定的な影響を与えますが、管理通貨制では発券銀行の資産が通貨の価値(信用力)に影響を与える要素がないことがわかります。

管理通貨制の通貨価値(信用力)は、国内で供給される財や用役の量と通貨流通量を基本とし、通貨価値が低下したときの逃げ場は外国通貨もしくは金や実物資産ということになります。

ここで重要なことは、逃げ場である外国通貨もしくは金や実物資産も、国内で供給される財や用役の量と通貨流通量の関数である物価変動の影響を強く受けているということです。
投機・資本移動・経常収支・利子率といった要因を除くと、“自由貿易”での外国通貨との交換レートは、物価変動率に規定されます。
例えば、日本のインフレ率が5%で米国のインフレ率が10%だとすれば、円高になります。
ある年の自動車価格が日本:100万円で米国:1万ドルだとします。自動車しか財がないとすると、円ドルレートは1ドル=100円になります。
翌年に、日本:105万円で米国:1万1千ドルになったとします。このときの円ドルレートは1ドル=95.45円になります。

現状の日本は、先進国では唯一とも言えるデフレ状況に見舞われています。
これは、日銀券が他のどこの先進国通貨に対しても価値が高くなる、すなわち円高になるということを意味します。

もう一つの通貨価値の逃避手段である実物資産はどうでしょう。
現金を実物資産に換えて意味があるのは、インフレ傾向のときです。
インフレ傾向であれば、5千万円で購入した土地が数年で7千万円になることもあります。その価格上昇率が預金利子よりも高ければ、実物資産に換えたほうが得です。
しかし、現状は資産デフレです。これは、5千万円で購入した土地が数年で4千万円になる可能性があることを意味します。それならば、預金利率が0%でも、現金のまま保有し続けたほうが得ということになります。

「デフレ不況」は、デフレであれば物に換えるよりも現金を持ち続けたほうが得だという経済論理を大きな一つの要因として起きるものです。(もう一つは、債務負担の過重化です)
産業は、保有しているお金を生産設備や原材料などいったん物に換えて、それで商品を生産してお金を回収するという形態をとるものです。
デフレは生産した商品の価格が下がっていくことですから、下手をしたら、生産に必要な物を購入した金額が回収できなくなるかもしれません。設備投資はほとんどが借金で賄われます。それを使って生産した商品の価格が下がり、同じ生産設備の価格も下がります。これは、借金の負担がずっしり重くなるとともに、後から安く設備投資した同業他社との競争力で劣ることを意味します。
これが、デフレによって深刻な不況に陥る経済論理の大まかな説明です。


日銀券の信用の基礎は、日銀ではなく、日本の産業力にあるという視点が重要です。
日銀券で財や用役とどれだけ交換できるかということが問題です。

産業力は、財の生産分野の普遍性と生産性に規定されます。
日本は原材料や近代的エネルギー源にそれほど恵まれていませんが、製品レベルで輸入しなければならないものは、航空機やCPUなど限られたものしかありません。
そして、実質的に世界一の産業国家になったように、生産性も極めて高い産業力を誇っています。

この産業力こそが、日本経済の強さであり、日銀券の強さなのです。

先ほど外国為替レートの説明をしましたが、外国為替レートの変動要因としてあげた物価変動比較は、それぞれの国の通貨流通量が同じだとすれば、生産性の変動比較で決定されます。
同じ通貨流通量であれば、生産性が上昇することで物価が下がります。
(逆に言えば、生産性が上昇しても、物価が下がるデフレを避けるためには通貨流通量を増加させればいいということです)
他の国よりも生産性が上昇するペースが高い国の通貨は、放って置けば、他の国の通貨に対して高くなるということを意味します。


ここまでの説明をまとめると、各国の通貨の価値(強さ)は、財の生産分野の普遍性と生産性に規定される、すなわち、産業力に規定されるということになります。


ですから、日銀がたとえ赤字国債を直接引き受けたとしても、それによる歳出の結果悪性インフレにならない限り、日銀券の信用は揺らぎせまん。

株式の買取や資産担保債権(売掛金)の買取も、日銀券の信用を直接脅かすものではありませんが、それらの濫用は歪なインフレ(特定資産の価格上昇)につながります。
財や用役というフローの価格はデフレなのに、株価や不動産価格だけが上昇するというとんでもない経済状況が生まれる可能性はあります。

(フローが潤沢になればこそ、ストックの価格が安定的に上昇するものです。特定の資産価格だけを意図的に上昇させようとしても、「デフレ不況」を解消することはできません)


日銀券の信用が揺らぐのは、産業力が低下し、失業者増加などそれで生じる国民生活の困窮化をカバーするために財政支出を拡大させることで悪性インフレが起きたときです。


ざっと説明させてもらいましたので、ご不明の点はレスをいただければ幸いです。

※ 参照書き込み

『“供給=需要”は「近代経済システム」を考察する根幹』
http://www.asyura.com/2002/hasan15/msg/1173.html

 次へ  前へ

議論9掲示板へ

フォローアップ:
  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。