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【「イラク侵略戦争」の戦況】 「強行偵察」+「空爆」を“本格攻撃”と説明する米英/アシリア・ナジャフ・バスラはイラク軍の孤立化に向けた“無差別攻撃”
http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/618.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 4 月 02 日 18:51:01:


主要メディアがきちんとした戦況を報じていないので、ここ2、3日間の報道を通じて読み取った戦況を素人ながら書いてみたい。


現在の戦線は、カルバラ周辺・ナジャフ周辺・アシリア周辺・バスラ周辺・クルド人自治区が主要なもので、クウェートからカルバラ周辺までの米英侵略軍補給路は不断にゲリラ戦術による攻撃にさらされれているというものである。
(補給部隊は、クウェート領内から攻撃の危険に晒されている)

■ [カルバラ周辺]:バグダッド南方の攻防戦は膠着状態


ここ2日ばかり、カルバラ近郊とりわけカルバラ南東にあるヒンディーヤ付近の戦闘が大きく取り上げられ、米英軍が共和国防衛隊に本格的な攻勢をかけているという“大本営発表”がそのまま日本の主要メディアでも報じられている。
(ちなみに、カルバラよりヒンディーヤのほうがバクダッドからは距離がある)

“大本営発表”報道でいちばん笑えるのは、1週間前からポジションが変わっていない米英軍がバグダッドに向け進撃していると解説していることである。

バグダッドをめざす(別にバグダッド市街戦を意図しているわけではない)先鋒部隊である第3歩兵師団がカルバラ周辺を最前線にしている状況はここ1週間変わっていない。

補給難に最も苦しんでいる第3歩兵師団機械化部隊がバグダッドに向け進撃できるわけがないのである。
ここ2日ばかりの“大本営発表”は、主として国内向けに「作戦は順調に進んでいる。米英軍はバグダッドに向けじりじり進撃している」という印象を与える為のプロパガンダである。

かと言って、カルバラ周辺で戦闘が行なわれていないわけではない。
報道を見聞きする限り、主たる交戦地域は、ユーフラテス川に架かる橋があるヒンディーヤのようである。(近くのヒラーは、クラスター爆弾を含む空爆が実施され多数の犠牲者が出ている)

米英侵略軍が行っている戦術は、「強行偵察」をかけ、それを迎え撃つイラク側を空から叩くというものである。
「強行偵察」だから、中隊レベルの戦力で橋を渡るそぶりを見せ、それを撃退するイラク側の戦力を推し量ると同時に、空爆で姿を見せたイラク側戦力を叩くというものである。

米英は、このような「強行偵察」+「空爆」を“本格交戦”と呼び、その繰り返しで共和国防衛隊メディナ師団の戦力を半減させたと発表しているのである。

ヒンディーヤの橋も、どちらかが確保しているという状況ではなく、イラク側は橋を渡ってきた部隊は撃退するという構えであり、米英側はそうであろうから強行偵察でおびき出すという作戦を取っているというものである。

重要なことは、爆破なりで橋を落とせるイラク側が橋を落とそうとはしていないことである。(米英側は、大部隊をバグダッド周辺まで進撃させなければならないので、橋を確保することが重要なテーマになる)

イラク側は、ヒンディーヤの橋をまだ残してもいいと考える戦況だと判断しているのである。(激しい砂嵐状況での攻勢や戦局全般が優位になったときの追撃に橋は必要である)
バグダッドにいちばん近い戦線となっているカルバラ周辺は、防御側のイラク軍は気象条件で有利なときしか攻勢をかけず、攻撃側の米英軍も、補給が十分ではなく増援部隊である第4歩兵師団が到着するのがあと1週間から10日くらいかかる状況で大きな攻撃はかけられないという膠着状態だと考えるのが素直である。


また、カルバラの西側には大きな湖(貯水池)があり、ダムで流水量が調整されているが、イラク側が最悪の事態だと判断すれば、自陣営にも大きな被害が及ぶが、ダムを決壊させて米侵略軍に大きな打撃を与えることも可能である。

カルバラはカルバラ地峡とも呼ばれる地理的特性を持ち、ダムを決壊させられたらカルバラ付近に陣取っている米侵略軍は多大な損失を被ることになる。

■ [ナジャフ周辺・アシリア周辺]:中南部の戦線は拠点都市の孤立化をめざす米英軍の無差別攻撃


米英侵略軍は、バグダッド攻略以前に、カルバラまで到達している先鋒部隊にきちんと補給できる状態を維持することが急務の課題となっている。

そのため、米英侵略軍は、補給部隊に対する攻撃の出撃拠点になっていると想定しているアシリアやナジャフを封じ込めようとする作戦を実施している。

ナジャフやアシリアを制圧する目的というよりも、ナジャフやアシリアから補給部隊を攻撃する部隊を出撃させないということを主目的にした攻撃を仕掛けていると推測する。

そのために仕掛けている攻撃は、ナジャフやアシリアを破壊し住民を虐殺することを厭わないものである。
無差別の空爆や砲撃を加えれば非武装住民は街から外に出てくるから、その後に残る人たちは。武装敵対勢力だからどんな攻撃をかけてもかまわないという考えに基づいた攻撃を継続していると思われる。

しかし、そのような攻撃でも、米英侵略軍は都市の縁に到達するのがやっとで、ナジャフやアシリアはイラク側が確保しているようである。

ただし、圧倒的な空爆力と火力を誇る米英軍が、都市破壊と武装勢力殲滅を厭わない戦術をとっていることからナジャフ・アシリアは危機的状況を迎えていると言える。

また、補給部隊を狙う攻撃部隊の出撃拠点がナジャフやアシリアに限らないのであれば、ナジャフやアシリアを攻囲していても、補給路の安全は確保できないことになる。


■ [バスラ周辺]:バスラ周辺都市の制圧を通じたバスラ包囲網の完成をめざす英軍

バスラの食糧備蓄倉庫まで砲撃して燃やした英侵略軍部隊は、イラク第2の都市バスラを制圧する前段階として、バスラ周辺の小都市を制圧しようとしている。

戦術は、ナジャフやアシリアに対するものと同じで、無差別の空爆と砲撃で住民を外に追い出し、あとは無考慮に残る抵抗武装勢力の殲滅を図るというものである。

バスラ周辺の小都市は表面的には制圧が可能だと見る。
物資の荷揚げ港として確保したクムカスルのみならず、サフワンでも今だ抵抗活動が残っている。
バスラ周辺の小都市は、徐々にそのような状況に移行すると見ている。

バスラそのものは、英侵略軍が市街戦に突入するとは考えられないので、空爆と砲撃による戦力の削ぎ落とし作戦が継続すると予測する。

バスラ市民が“反乱”に動く兆しさえみえないので、武装勢力も、交替で街の外に出て食糧や水の供給を英軍から受け取りまた市内に戻るという行動を取っているはずである。
(市民が“反乱”に動き英軍に情報を渡せば、イラク側武装勢力は孤立化し継戦能力を徐々に失っていくことになる)

また、現在のところ、イラク側のバグダッドからバスラへの補給路は確保されているようである。

バグダッドからバスラへの補給路が断たれたときには、イラン側からどのような補給や支援が行なわれるかが重要な鍵になると考えれる。

■ [クルド人自治区]:基本的には戦線未確立で、都市空襲とイスラム勢力叩きに狂奔
1000名の空挺部隊が夜間パラシュート降下したと喧伝された北部地域であるが、パラシュート降下自体が不必要な戦意高揚のためのイベントであったように、イラク側と地上で本格的な戦線が開かれているわけではない。

北部に展開している米侵略軍の主標的は、キルクーク油田であるが、そのために必要なキルクールやモスルといった都市を窺う段階にも達していない。

米侵略軍が現在北部地域で行なっているのは、クルド人“親米”一部武装勢力を傭兵として使ったアンサール・イスラム潰しであり、北部諸都市に対する無差別空爆である。

クルド人“親米”勢力は、クルド愛国同盟やクルド民主党が組織としてクルド人自治区を越えた「イラク侵攻」に同意していないので、そのなかから武装勢力を雇ってアフガニスタンの北部同盟的な役割を担わせている。

北部山岳地帯の村落を拠点にしていたイスラム勢力であるアンサール・イスラムは、米侵略軍の無差別空爆を受け、村民ともども大量の犠牲者を出し、クルド人傭兵部隊の侵攻とともにイラン領に逃げたようである。
(アンサール・イスラムが影響力を保持していた村落は、住居のみならずモスクも空爆を受け大きな損害を受けている)

米英侵略軍は、例によって、敬虔なムスリム勢力であるアンサール・イスラムをアルカイダと結びつけ、生物化学兵器の製造拠点が発見されたかのような宣伝にいそしんでいる。

イラク側は、クルド人自治区近辺に陣取っていた部隊をモスルやキルクークの防御に回し、米侵略軍が主たる標的としているキルクーク油田の防衛に徹する構えを見せている。

イラク側は、バグダッド周辺に次ぐ防衛力を北部地域に置いていると考えられるので、北部地域の米侵略軍は、都市への無差別空爆を継続しながら、南部や北部の戦況を眺めながら作戦を決めていくと推測する。

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