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ブッシュ米大統領がイラクのフセイン大統領に最後通告を突き付けた。フセイン・イラク大統領に48時間以内の国外退去を要求、応じないなら武力攻撃すると述べた。数日後には米軍を中心にした対イラク攻撃が始まり、湾岸は再び戦火に包まれそうである。武力攻撃は国連安保理の新決議なしに行われる。安保理で妥協が成立しなかったことは残念である。イラク攻撃は国連、そして米欧同盟に大きな傷跡を残して始まろうとしている。
米欧同盟の深い亀裂
今、戦争回避する道がまったくなくなったわけではない。ブッシュ大統領が求めたようにフセイン大統領とその息子たちが国外退去することである。彼らがそうする可能性は極めて低いが、国際社会は最後まで平和解決のためフセイン大統領に圧力をかけるべきである。そしてフセイン大統領は最後の決断を下すべきである。
ブッシュ大統領は演説で、フセイン大統領が12を超える安保理決議を無視し続けてきたと指摘、大量破壊兵器を隠し持っているとの認識に立って平和的に武装解除させる試みは何度も失敗に終わったと強調した。武力行使しか残された選択肢はないというわけである。
米国が武力行使に踏み切れば、それはブッシュ大統領が昨年9月に打ち出した「国家安全保障戦略」の適用第一号となる。この戦略は先制攻撃を特徴とする。侵略が間近に迫っていなくても、直接的な挑発行動がなくても、攻撃できるという。国家だけでなく、テロリスト集団が大量破壊兵器を使用するかもしれないという現代的な脅威に対する新戦略である。
ブッシュ大統領は「遅きに失する前に危険を取り除かなければならない」と強調した。これが安保理の新決議なしでイラクに先制攻撃することを決断した論理である。
だが、その代償は大きい。世界各地で反米・反戦デモが起き、米国内の世論も結束しているとは言い難い中での決断である。英国では与党労働党内部からも反旗が翻り、盟友のブレア首相は苦しい立場に追い込まれている。
フランスなどにはこの新戦略への反発が強い。米国が一方的に脅威だと認識すればどんなところに対しても先制攻撃してよいのか、それは米国の「一国優位主義」の表れではないかと問うている。
今回の米仏対立はイラクの大量破壊兵器処理をめぐる対立というよりも、こうした危機解決の戦略をめぐる対立という様相が感じられる。それだけ同盟諸国間の亀裂は深い。冷戦が終了し、ソ連という強大な敵が消えて11年余り。その構造変化が同盟関係に大きな影響を与え始めている。
米欧同盟の変質は国連のあり方にも大きな影響を与えざるを得ない。今回の安保理討議の結末は米仏双方にとって強い不満が残るものだ。米国にとっては、危険な国の大量破壊兵器を廃棄させるために国連が行動できなかったという意味で国連は機能不全だった。
一方、フランスにとっては、対イラク武力攻撃に踏み切ることについて総意がなく、明確な安保理のお墨つきがないままに攻撃が行われることは、国連が無視されたと受け止められる。
アナン国連事務総長は安保理の支持なしの武力行使には合法性に疑問符が付くと述べたが、フランスなどと同様の認識を示したものだ。
重視すべき日米同盟
今後は特に米国内に国連への不信感が高まる可能性がある。ブッシュ政権内には、もともとイラクを攻撃するのに安保理の決議は必要でないとの意見が有力だったが、パウエル国務長官らの主張で方針を転換、昨年11月には1441号決議を取り付け、今回、新決議採択にも必死に努力した。皮肉にも近年になく米国が国連を重視したといえる。
数日後にも始まるだろう対イラクの武力攻撃に米国と一緒に参加すると表明している国は、英国、オーストラリア、ポーランドなどだが、今後は紛争が生じても安保理を迂回(うかい)し、今回のようにその時々の状況に応じて仲間を集って対処する傾向が強まることが予想される。国連も岐路に立たされている。
小泉純一郎首相はブッシュ大統領の決断を支持すると言明した。「あれば望ましい」と繰り返し指摘してきた新たな安保理決議の採択が成立しなかったという状況の中での米国支持表明だが、日米同盟の重要性などをふまえると、その支持はやむをえないと受け止められる。
小泉首相は言及しなかったが、不安定な朝鮮半島情勢も日本の姿勢を決める上では極めて重要な要因である。危険な核ゲームを展開する北朝鮮に対しては米国が決定的に重要な役割を果たす。
春秋