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米英など有志連合によるイラク攻撃のカウントダウンが始まった。ブッシュ米大統領は17日、イラクの大量破壊兵器問題で「我々の誠意は報われなかった」と演説、フセイン政権に「大統領父子が48時間以内に国外退去しなければ、武力行使に入る」との最後通告を行った。
大量破壊兵器の武装解除は過去12年もの間、国連安全保障理事会が17の決議を重ねてイラクに課してきた重い責務だ。査察再開から4カ月近くたつが、炭疽(たんそ)菌などの行方が解明されず、科学者の自由な聴取も進んでいない。
小出しの譲歩に終始せずに、国際社会の義務を誠実かつすみやかに果たしていれば、この事態は避けられた。その意味で、イラクに非があるのは当然である。
だが、米英の決定は安保理で多数派の了解を得られなかった。にもかかわらず、査察による武装解除の成否を見極めずに強制行動に踏み切ることは支持できない。新決議採択を求めてきた外交とも矛盾している。なぜ、もう一押しの努力を尽くせなかったのか。
米英は武力行使の根拠を湾岸戦争で多国籍軍に武力行使を認めた国連決議678、大量破壊兵器廃棄を停戦条件に定めた687、イラクに「最後の機会」を与えた1441に置いている。日本などこの見解を支持する国もあるが、国際社会の解釈は割れている。アナン国連事務総長は「安保理の合意なき武力行使は正当性を疑われる」と述べた。
米国の狙いが脅威に対する先制行動を認めた「ブッシュ・ドクトリン」の発動にあるならば、既存の国際ルールを一方的に書き改める行動として無視できない。国連の機能や世界秩序のあり方にも深刻な疑問を投げかけよう。
その半面、武装解除をすみやかに達成する方策をめぐって安保理が分裂し、世界が納得する対案を示すことに失敗した国連と国際政治の現実も直視しなければならない。とりわけ常任理事国同士が感情をむき出しにした対立に陥ったことは、5大国の連帯責任放棄とも言える状況を生んだ。
そのことが国連と集団安全保障体制への信頼と権威の喪失につながりかねないことは、憂慮すべき事態だ。米英は他の常任理事国と共に、国連の信頼回復に重大な責任を負ったことになる。
日本時間20日午前以降、いつでも攻撃が始まる。武力行使回避の可能性はフセイン父子の決断に絞られた。退陣要求はクウェートなどアラブ内にもあった。周辺諸国の最後の説得に注目したい。
フセイン政権が徹底抗戦すれば世界各地で支援組織のテロが起きる恐れもある。日本も不測の事態に備える必要がある。
米英は戦後、安保理決議を求めて復興と平和の回復に努めると約束した。しかし、戦闘が予測通りに進むとは限らない。誤爆や市民の犠牲を憂慮する声も強いことを忘れてはならない。
最後通告はなされたが、米英は最後の瞬間まで流血回避に最大限の努力を注ぐべきだ。
(毎日新聞 03-18-23:56)