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(回答先: 【推奨書籍】リチャード・A・ヴェルナー著『虚構の終焉』を読んで − けっこう危険な理論かもしれない − 投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 22 日 23:37:35)
あっしらさん。 こんにちわ。
「虚構の終焉」は出版されたばかりですね。 まだ入手していません。 しかし、概要を見たところ、以前の書籍と似たような内容みたいなので、ヴェルナーの理屈全般に対する評価ということで、とりあえずレスさせて下さい。
全体評価として、あっしらさんのご指摘に同意しますが、私が変だと思ったところを中心に指摘してみます。
(経済事象の説明理論としては極めて優れているが、・・・・・政策提言内容は妥当性が欠けていると思われる。)
現代日本の普通の本屋に言っても、読む気の起こる経済理論書はほとんどありません(「日本の地下経済」「キャバクラの経済学」「風俗の経済学」それから宝島社のヤクザ経済シリーズは面白かったです。 理論書じゃないです)。 時間の無駄だ。
ヴェルナー氏の書籍群は、この点だけで高い評価を受けてしかるべきだと思いますね。 だって読む気が起こるんですもの。
(ヴェルナー氏の政策提言に妥当性が欠けているのは、ヴェルナー氏が現代経済学ないし「近代経済システム」の枠内にあるからだろうと推測する。)
これはしょうがないなあ。 この枠を出たら、きっと上智大学から追い出されちゃうよ。
(『虚構の終焉』では、「利潤の源泉」と「資本の論理(経済活動の目的と基準)」という近代経済システムの基礎的問題がまったく触れられていない。
そのため、経済事象が自然現象のように捉えられ、経済成長は推進力である「信用創造」の拡大で実現できるという政策提言になってしまっている。)
「虚構の終焉」の記載は分かりませんが、「利潤の源泉」については、この人は分かっていると思います。 ただし、それは「暗黙の理解」に留まっていますね。 彼は、1972年くらいまでの日本の輸出産業育成政策、そのための資金配給制度の利用を高く評価しています。
これは、暗黙のうちに、利潤の源泉が、高度資本投下された生産設備を用いた付加価値製品の他の国民経済への輸出にあるという点を理解しているからです。 この点ではリストに近いのかな。
(ヴェルナー氏の政策提言を約めれば、「信用創造」拡大の阻害要因である不良債権処理を行ない、日銀(+銀行)が「信用創造」の拡大を主導すればいいというものである。)
これは絶対変です。 何言ってるんだという世界ですよ。
ヴェルナー氏は、1980年代後半において、日銀が窓口指導を利用して、強制的に銀行貸出の膨張を画策したと述べていました。 これはたぶん真実。
これこそが、まさに日銀主導による信用創造の拡大でした。
ヴェルナー氏の論理によると、このような行動を批判できません。 だってヴェルナー氏の言う通りの行動ですからね。
その結果がいまの悲惨な結末なのです。 ヴェルナー氏はご自分の立場に自覚的とは思えない。 ヴェルナー氏の理屈は、そもそも日銀批判になっていない。 自己批判になっています。
1980年代後半には、銀行貸出を膨張させても、それが国民経済的な「利潤の源泉」に回らず、長期的に見てゼロサムゲームである投機に資金配分されてしまいました。
ヴェルナー氏には、このような「国家統制的な」「資金配分−信用創造」行動行動を否定する論理がありません。
それでは日銀を批判できないはずです。
この結果、「陰謀論」的方向に流れてしまっているのだと思います。
これは「利潤の源泉」についての理解が暗黙に留まっているからかもしれません。
(このような政策提言でも、1995年頃まであればけっこう高い現実通用性を発揮したと思っているが、デフレ・スパイラルに陥っている2003年に刊行した書籍で展開する政策としては現実通用性が低下する。)
(鶏と卵の話になるが、デフレにおいては、銀行が健全であっても、貸し手側・借り手側の両方からの判断で「信用創造」は縮小するから、「信用創造」を拡大するためにはデフレを解消しなければならない。)
デフレ条件下では、銀行Aが貸出を増加させると、銀行Bがその貸出金を回収してしまいます。
デフレ条件下では、積極的に貸出を増加させた銀行が馬鹿を見ます。
従って、デフレ条件下では、自由主義的経済価値観に立つ限り、貸出増大はありえません。
これを実現するためには、銀行に、貸出増大を強制するしかありません。
ヴェルナー氏は、まさにそれをやれとおっしゃっているのでは。
だけどその貸出金の使途は何になるんでしょうか。
○ 1980年代後半と同様の投機に回る。
○ 中国の生産力向上に設備投資される。 国内生産が縮小する。
つまり、強制的に貸出増大させても、けっきょく貸出総額は、国内生産力−消費力に応じた均衡点に定まってくるはずです。 なぜなら、供給者への貸出金は投資に回るわけであり、その投資が回収できる範囲を超えた貸出は不良化するからです。 均衡点を超えた部分は長期的に見て蕩尽されると考えています。
いま必要な政策は、国内において投資を回収できる条件を創造することだと思いますね。 そのためには貧乏人に金を回す。 それしかないと思うんですが。 (これは資本家の立場にたって考えているつもりです)。
貸出を増やせというのは実に怪しい。