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日本が貿易収支赤字に転じる論理
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投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 20 日 18:45:04:

(回答先: Re: 質問です 投稿者 キャプテン 日時 2003 年 5 月 20 日 07:46:15)


キャプテンさん、こんにちわ。


Q:貿易黒字が維持されるのがここ2、3年だと考える根拠


日中の関係性変動と今後顕在化する「世界的なデフレ不況」が基本的な根拠です。

● 日本と中国

中国が米国の貿易収支赤字に占める金額で日本を追い抜きましたが、中国の輸出拡大は、日本からの生産財(生産設備や部品)の輸入に負う部分が多く、日本にとっては貿易収支黒字に貢献しています。(中国を迂回した日本の対米輸出という側面がある)

日本企業の対中投資は2000年からさらに増大しており、これが生産財の対中輸出に貢献していますが、今後は、それが中国での生産拡大につながることになります。

中国企業は日本の技術にキャッチアップすることをめざしており、生産財の国内生産を徐々に高めていくはずです。

中国が外資に大きく依存していることを除けば、現在の日中関係は、60年代の日米関係に似ています。
60年代の日本は、鉄鋼・家電・自動車などで米国の技術を導入し、それにより上昇させた生産性を武器に対米輸出を拡大しました。
日本がサービスを除く貿易収支で安定的な黒字基調に転じたのは69年です。
そして、日本の黒字化と軌を一にするように米国の貿易収支は赤字に転じ、71年に「ニクソン・ショック」(ドル兌換停止)につながりました。

中国の輸出主体がたとえ日本企業などの外資だとしても、その財の生産に従事しているのは中国人であり、国際収支としても中国の輸出としてカウントされます。

外資に依存している分、中国の変化のほうが60年代の日本の変化よりも速いと予測できます。

60年代の日本企業は、外貨保有高(国際収支)の制約を受けるとともに、輸出市場も商社と手を携えながら苦労して開拓しました。
現在の中国は、外資が資本を持ち込み、外資が自国を含む世界市場に輸出を促進するのでそのようなハンデを背負うことがありません。
日本企業は、デフレ・スパイラルに陥った日本市場でなんとか利益を確保しようと、中国で生産した財を日本に持ち込み販売していますが、日本企業が行なっていることなので、それに歯止めをかけようという動きはほとんどありません。

また、家電など新規需要を誘発する財に恵まれていた60年代と違って、現在は、携帯電話を含めて財(需要)が飽和したなかでの販売競争になっており、新規の財を推進力とした需要の拡大はほとんど期待できません。

このようなことから、「世界の工場」としての中国のウエイトが否応なく高まっていくと予測しています。
(世界の需要規模が拡大しないのなら、中国のウエイトが高まるということは、日本のウエイトが下がっていくことを意味します)

ここ2、3年で、中国企業も、普及品だけではなく中級品の輸出に進出していくと考えています。(別に、日本人が優秀だから米国に追いついたわけではありません)

これは、60年代の日米関係と同じように、棲み分け的な日中の貿易構造が変化することを意味し、米国が貿易収支赤字に転じたように日本も赤字に転じると予測しています。


● 世界的なデフレ不況

今後、世界的なデフレ不況が顕在化すると予測しています。

まず、諸外国の不況そのものが、日本の輸出を抑制することになります。

やっかいなのは、不況にデフレが伴うことです。

日本経済が経験しているように、デフレ状況に陥ると、下落した財の価格でも利益が得られるようにとより安いコストを求めるようになります。
これが、中国への生産拠点移転の拡大につながっています。

米国や欧州諸国は、デフレ不況になると、自国産業を保護しつつ、輸入しなければならない財はできるだけ安く輸入したいと考えるようになります。(生活扶助のための財政支出を抑えるためにも必要なことです)

自国のデフレのなかでも生産拠点を移転させてきた日本企業は、世界的なデフレのなかでさらに生産拠点の移転を進めるはずです。
(同じ価格で輸出したとき、日本で生産すると1個当たり100円の利益なのに対し、中国で生産すると1個当たり200円の利益が得られるとなるとそのような行動を起こすのがあさはかな“資本の論理”です)

さらに、人民元のレート問題もあります。

中国の人民元は実質的にドルにペッグさせられているので、ドルレートの変動にあまり影響を受けません。
現在のようにドル安傾向になっても、従来通りの価格で輸出し従来通りの利益が得られます。

日本は変動相場制で円高傾向になっています。
これは、従来のドル建て価格で輸出すると、日本円ベースの売上と利益が減少することを意味します。

このような現実が、日本企業にさらなる生産拠点移転を誘導すると予測しています。


「世界の工場」としての中国のウエイト増大が日本の輸出を減少させ(製品輸入は増加)、「世界的なデフレ不況」が日本企業の輸出財生産拠点移転を促進させることから、日本の貿易収支が赤字に転じるのはそれほど先の出来事ではないとみています。


※ 参考資料(貿易収支にはサービス収支を含む)


       貿易収支     経常収支

95   6兆9550億円 10兆3860億円
96   2兆3170億円  7兆1580億円
97   5兆7680億円 11兆4360億円
98   9兆5300億円 15兆7850億円
99   7兆8650億円 12兆1740億円
00   7兆4300億円 12兆5760億円
01   3兆8567億円 11兆9124億円
02   6兆3205億円 13兆3371億円

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