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有事“最前線”の沖縄ルポ 返還の花園『真っ先に没収』東京新聞
http://www.asyura.com/0304/dispute10/msg/434.html
投稿者 小耳 日時 2003 年 5 月 17 日 15:07:12:

 有事関連三法案が衆院を通過した翌十六日、太平洋・島サミットに出席するため小泉純一郎首相が沖縄入りした。在日米軍基地の七割以上を抱えるオキナワは、ひとたび有事が発生すれば“戦争”の最前線になる。第二次大戦後、米軍や自衛隊に土地を収用された経験もある「基地の島」の人たちは、個人の財産や権利を守る国民保護法制が後回しになった法整備に、新たな苦悩を抱き始めた。

  (市川千晴)

■水やりでも自衛隊と攻防

 那覇国際空港に隣接する陸上自衛隊那覇訓練場。そのど真ん中にある花園「ちゅらさ(美しい)ガーデン」には、今マリーゴールドやボタンが咲き乱れている。この花園は、かつて自衛隊に貸していた民有地だが、地権者で平和環境活動家の高江洲朝男さん(55)が二十年間の契約更新期限の際、更新を拒否したところ突然昨春、返還された。高江洲さんは顔を曇らせる。

 「有事になったら真っ先に私の花園は没収されてしまう。人を殺す戦争に協力しろと人権無視の発言をしておきながら、みなさんの人権は守りますよ、なんて言われても矛盾しか感じない。実際、米軍の情報提供で有事を判断するんだから、米国が戦争するためにまた日本国民が強制的に協力させられるようなものだ。戦前に逆戻りだよ」

 開園一年を記念して十五日、高江洲さんは花園造り体験をもとに童話「コロとおじさんと平和のかかし」(風の里企画)を出版した。ヒマワリをめぐって自衛隊と意見の衝突があった実話も題材にしている。

 ある日、若い隊員が花園の外に咲いたヒマワリを見て「心が和みますね」と高江洲さんに声をかけてきた。だが数日後、別の隊員が「訓練の邪魔になるから切り倒す」と警告したため、仕方なくヒマワリを花園内に移し替えたという。

 「『植物や生き物をいとおしむ心があっては優秀な隊員になれないのか』と問いつめたら、その隊員は黙ってしまった」と、高江洲さんは苦笑する。

 自衛隊との“攻防戦”はまだある。水道管敷設が許可されなかったため、自宅から毎日、十二個のポリ容器に水を入れて乗用車に積み、通った。昨年十二月、ついに井戸を掘った。訓練場への入場制限は当初、年に四回程度といわれていたが、実際はそれ以上だった。今年だけでも入場制限は十回を数え、一回につき平均三日間も入れない日が続いている。十六日も島サミットの警戒を理由に立ち入り禁止になった。

 「イラク戦争もあり、自衛隊とのやり取りは予想以上に障害があった。多くの仲間が手伝ってくれたけど結局、毎日の手入れは私一人。最初は義務感、次は意地。寂しくて花や昆虫に話しかけてるうちに命の尊さをあらためて感じた。花園は訓練場にある唯一のオアシス。平和も突然できるものじゃない。それぞれの役割を果たして次の世代に伝えるためにも、親が子どもたちに読み聞かせる形での童話にこだわった」

 土地返還から一年たつが、この平和運動はなかなか広がらない。那覇防衛施設局の広報担当者によると、高江洲さんの返還以降、自衛隊が借りていた民有地の返還はないという。

 「この訓練場でも何人かは返してもらったけど、利用方法がない。井戸水を隣の返還民有地にあげようとしても、管の敷設はできない。賃料受け取りを拒否していなかったら十二年間で約一千万円もらえたと思うが、反対に井戸掘りに八十万円、出版に百万円と出費ばかりだ。利用しろって言っても難しいよね」

 だからこそ高江洲さんは多くの市民と共有したいと願う。「寄付を募って、三階建てのビルと同じぐらいの『平和かかし』を建てて登記したい。これなら少しの負担で参加できる。有事の時に強制収用されそうになっても、みんなで戦争反対を訴えられる」

■自粛要請押して民間空港で給油

 沖縄では先月二十六日、有事法制による市民協力を連想させる出来事があった。沖縄県基地対策室によると、フィリピンでの米比合同演習のため在沖海兵隊が宮古空港を給油基地として利用したのだ。同空港は民間航空機の離着陸が多く、県も「緊急時以外は利用しない」という空港の設置目的に反するとして自粛を求めたが、強行された。

 十五日、那覇市内で有事法制反対のデモをしていた琉球大学生会の園山大地会長(23)は、「強制的にひめゆり少女隊と同じように戦争協力しろと言っているようなもの。国民を保護できるわけがない」と憤る。

 地元紙の調査では、有事法制に県内五十二市町村の首長の42・3%が賛成、21・2%が反対と答えるなど、県民感情は複雑だ。自民党県支部連合会の仲松寛事務局長は「沖縄戦では県民の生命や財産を守れなかったというつらい経験がある。それがこの法案で整備されているのか検証する必要がある」と話す。

 共産党県委員会の伊佐真市委員長代理は、米軍が一九九四年に北朝鮮攻撃を想定して日本に要求した項目を引き合いにする。「沖縄の海兵隊と岩国基地でトラックとトレーラー計千三百七十台の調達、嘉手納基地では避難住民後送支援 用の簡易寝台や毛布二万五千組などを要求してきた。米軍はできっこないことばかり要求するはずだ。これじゃあ県民の生活も安全も成り立たない」と批判した。

 米軍普天間飛行場の移設先の名護市辺野古地区で、基地反対運動を続ける「ヘリポート建設阻止協議会命を守る会」の代表、金城祐治さん(68)もあきれる。「戦争がなかったから日本がここまで経済発展できたことを忘れちゃいかん。日米両政府が独走しないよう、若いもんがもう少し国を動かすようにならんと」

■「脅威利用して法案通し怖い」

 ヘリ基地反対協議会の仲村善幸事務局長は「小泉さんが北朝鮮やテロの脅威をうまく利用して『備えあれば憂いなし』なんて重みのない言葉で法案を通してしまうのは非常に怖い。国民的議論がないのは、逆に国民の理解と合意を得ていないとも言える。『カギや武器がなくても生活していける社会』にするのが政治家の役割だ」と強調する。

 「有事になれば、名護では病院や学校など公共施設が強制収用されるだろう。物理的な制限があっても食っていけるが、精神の自由はそうじゃない。今でもほとんどの人が基地反対さ。でも振興策をちらつかせられて黙っている。いまは『戦争反対』って声をあげると非国民扱いされたり、沖縄人じゃないなんて言われたりするのが一番怖いようだ」と憂える。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030517/mng_____tokuho__000.shtml

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