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(回答先: 相続可能財産を被相続人1人当たり1000万円程度に制限したらどうだろう。 投稿者 何を言うやら 日時 2003 年 5 月 08 日 23:29:34)
政策として現実性があるとは思えませんが、相続制度の全面的廃止、あるいはその上限設定などによる部分的廃止は、政策論あるいは立法論としては興味のある問題になります(私は賛成しませんが)。
現在の相続制度は、被相続人の権利義務の一切を相続人が承継することを原則としています。相続が開始しても(被相続人が死亡しても)、清算手続きを経ることなく、プラスとマイナスを含めた相続財産がそのままの状態で相続人に移転します。これを拒む相続人は、わざわざ裁判所に出向いて、相続の放棄または限定承認の申述が必要です。これが現在の制度です。相続の放棄は、相続財産がマイナスである場合などに行われますが、件数は多くありません。
前段で言及した清算手続きとは、会社の解散や破産を連想していただいてよいと思います。相続財産(被相続人の財産)をすべて換価して、債権者に弁済した上で、残余を国に帰属させる手続きです(一部、たとえば上限1000万円が相続人に帰属しても同じです)。現在の相続制度においても、相続人がすべて相続を放棄した場合などは、これが行われていますが、件数からいえば例外的です。死亡によって、清算手続きを経ないまま借金が国庫に帰属するなら、債権者は無制限に貸し付けることになりますが、これは許容できません。そのため、相続制度の全面または部分的廃止のためには、清算によって、相続財産の換価代金を超える金額は弁済されないという制度が不可欠で、結局、相続財産の清算手続きを原則とすることになります。
このような制度の社会的な効用とコストですが、破産類似の事件が年間数百万件増えることになる裁判所ないし行政機関の負担を考えないとしても、債務者の死亡というまったく偶然の事情で清算手続きに巻き込まれることが避けられないので、金融機関は個人向けの融資に慎重になるでしょう。消費拡大を予期した政策と思いますが、実際には耐久消費財の購入が落ち込む一方で、死後にこれらが大量に換価されて市場に供給されます。(現状では、現預金より不動産などを少し低く評価する相続税制のため、いわゆる相続税対策が横行していますが、これはデフレ期には投資を促進する効果もあります。)