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さすがに”早耳”のあっしらさんがいち早く紹介していますがねイマニュエル・トッドの「帝国以後」(藤原書店)は面白い。米国の現状と行く末を鋭く分析しています。
トッドは、英国出身のようですが、現在はフランスの人口学者。出産率と、異人種間の結婚率を、民主化・高度工業化社会のバロメーター(メルクマール)として、米国を始め、世界各地域
の動向を分析していまする米国については、通説の「圧倒的な軍事力をバックにした世界帝国論」を否定し、アフガンやイラクなどの弱小国家を叩く力しかない、とみています。しかし、「世界帝国としてのパワー「を(バーチャルパワーに過ぎないのですが)誇示する必要があるため、戦争に至るプロセスは、芝居がかった「劇場国家」的なパフォーマンスになる、とみています。
また、当然のことながら、フランスを中心にした「大陸ヨーロッパ」に(米国に比べて)圧倒的な優位性がある、としており、イラク問題が顕在化する前の著作ですが、@独仏の提携Aロシアの大陸ECへの接近−−を予言しています。ロシアについては、最近の欧米系専門家の分析の中では、最も好意的で、90年代の(エリツィン統治下の)混迷を完全に脱却し、大国への復帰の軌道に乗り始めた、と評価しています。
まあ、「フランス礼賛」が目立つのと、中国やアジアへの言及が少ない、など問題点もありそうですが、イラク問題への対応を巡って、シラクトプーチンも参考にしたのではないか、といわれるだけの内容ではあります。
米国の指導部については、「キッシンジャーは相変わらず、自分の頭の良さを絶賛している」だの「ラムズフェルドの戦争哲学は子供の砂遊びのレベル」と痛烈にこきおろしています。ダブヤ政権への欧州知識人の強烈な軽蔑の一端がうかがえます。
なお、日本の特殊性については、エマニュエル・ウォーラーステインの「世界システム論」を手かがりに、新しい視座を打ち出そう、としている山下範久氏(北海道大助教授)の「世界システム論で読む日本」(講談社選書メチエ)が(難解ですが)参考になります。