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Ddogさんの『自国通貨安競争について』( http://www.asyura.com/0304/dispute10/msg/191.html )に対するレスです。
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Ddogさん、こんにちわ。
先生という呼びかけはやめてください(笑)
>Ddog:変動相場制の現在でも、歴史は繰り返す可能性を、昨今の各国中央銀行の
>動きからして、切り下げでなく、自国通貨安競争を指向していると思えます。
管理通貨制&為替変動相場制で荒業を使わずに“自国通貨安”にするためには、他の国よりもインフレ率を高めるしかありません。
これは、世界的な先進諸国デフレ傾向のなかでは自国通貨安政策が取れないことを意味します。
Ddogさんの「自国通貨安競争を指向している」というのは日本などいくつかの国の動きにふられていると思います。
中国は実質ドルペッグ制ですから、自国通貨安政策ではなく安値固定を政策としています。(これは中国経済を破壊する愚かな政策です)
米国は基本的にドル高政策をとっています。(それでもドル安を基調としてきたのは経済論理によるものです)
EUはユーロ高を望んではいませんが、ユーロがドルに対して弱くなることには強い懸念を抱いています。(基本的には1:1のパリティを志向しています。国際商品がドル建てである限り、ユーロ安は悪性インフレの要因になりかねないものです)
オリジナルで説明したように、変動相場制では相対的高インフレ政策以外で「自国通貨安競争」に勝ち抜くことはできません。
相対的高インフレ政策以外で「自国通貨安競争」に勝ち抜く方法をお示しください。
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Q1:
あっしら:● 金本位制での「通貨切り下げ」効果
円安により自転車の国内価格が12円になればドル建て価格は9.6ドルになり、ぎりぎり競争力の上昇が実現でき、13円になれば10.4ドルになるので、逆に競争力を低下させることになります。 現在でも経済論理ではなく意図的な円安政策が求められたりしていますが、無条件に円安で国際競争力が上昇するという考えは虚妄です。
Ddogさん:あっしら先生質問です!このモデルの場合100%原材料は輸入し、生産性の向上といった要因は無視されておりますが、あくまでもこの前提であって、実体経済においても円安で競争力が上昇する考えは虚妄と断言できるのですか?
経済学の弱点は、単純化モデルなど、一般相対性理論における特殊相対性理論のようなもの、ある一定の条件の前提に思考するが、実際そんな経済環境など存在しない。戦前のように比較的単純な仕組みで経済が成り立っているならいざしらず、現在の複雑な要因がからまる、実体経済にあっしら経済学は実態経済に、追いついていると自信有りますか?
A1:
今回のテーマは、外国為替レート変動を通じた景気回復ないしデフレ解消ですから、同じ交易構造と生産性比較が同じで維持されているということを条件に、単独の平価切下げを通じて為替レートが下がったときの経済変動論理を考察しています。
(為替レートの変動は交易条件の変動、輸出入の財的構成を交易構造と受けとめてください)
ご質問の「100%原材料は輸入し、生産性の向上といった要因」を加味して説明します。
原材料を100%輸入していれば、平価切下げで原材料の円建て輸入価格は上昇します。
この場合、勤労者の生活費が円建てで同じだとすれば、原材料が製品コストの100%になることはないので、生産性の変動が日米で同じであれば、円安率>コスト増加率になるので対米競争力は高まります。
生産性の向上は、日米の勤労者が日本の平価切下げ前と同じ生活レベルを維持し続けるとしたら、同質の製品を生産するために必要な労働量がどう変動するかに還元できます。
当時の日本は、鉄鋼や機械類を輸入する交易構造にあったので、生産性を上昇させるためには機械類を輸入する必要がありました。(米国のほうが近代的技術が発達していた)
設備投資は10年といった長い年月をかけて償却するものです。これは、輸入額が一時的に膨大になり、それに対応した輸出額は時間軸として間延びすることを意味します。(輸入した資本財で生産した財を全部輸出するとしても、1年間の輸出で輸入の1/10しか稼げないということです)
当時の日米の勤労者は米国のほうが生活レベルが高かったので、同じ生産システムを採用すれば、日本のほうが生産性が高くなり、競争力も高まります。
しかし、資本財を輸入に依存していれば、輸入超過から金の流出を招き、金本位制であれば通貨量収縮につながり、最終的には保有金量の枯渇から輸入超過が不可能になります。(日本は、金本位制をやめた後も、対米戦直前まで国際決済のために金を現送していました)
保有金量が枯渇した時点で、生産性を上昇させることもできなくなります。
このようなことから、平価切下げ効果は、原材料の輸入価格の上昇だけではなく、資本財や中間財の輸入価格の上昇も考慮しなければなりません。
>あくまでもこの前提であって、実体経済においても円安で競争力が上昇する考えは虚
>妄と断言できるのですか?
「無条件に円安で国際競争力が上昇するという考えは虚妄」と書き、オリジナルの書き込みで「「円安信仰」は、原材料のみを輸入し高付加価値財を国内で生産しているような時期にのみ通用するものです」と説明しているように、無条件に「実体経済においても円安で競争力が上昇する考えは虚妄と断言できる」とは言っていません。
国内で加工することがない製品輸入比率が60%を超え、資本財や中間財の輸入も増加している現在の日本が円安政策を採っても交易条件が良くなるわけではありません。
奥田経団連会長は「1ドル=110円〜115円が望ましい」と言っていますが、輸出優良企業でもそう判断する交易構造であり、輸入財の使用が不可欠で最終財の需要が国内のみである多くの企業であれば、デフレ圧力のなか、もっと円高になって欲しいと思っているはずです。
>戦前のように比較的単純な仕組みで経済が成り立っているならいざしらず、現在の複
>雑な要因がからまる、実体経済にあっしら経済学は実態経済に、追いついていると自
>信有りますか?
戦前と現在の経済事象のどちらがより複雑だということはありません。
どちらも複雑ですから、様々な事象を分析して、より規定的な要因を見つけ出すことが重要です。(これは自然現象を対象とする自然科学と同じ手法です)
規定的な要因と論理を掴めば、同じシステムが続く限り、経済事象の先行きも予測することができます。
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Q2:
あっしら:金本位制の「平価切下げ」(通貨切り下げ)でも、あらゆる国家が同じ率で「平価切下げ」を行なえば、国際的価格競争力は結局変わりません。また、「平価切下げ」を行っても、貿易赤字で金が流出することには変わりありません。(みんなが「平価切下げ」を行ない同じ貿易状況であれば、通貨表現での貿易収支規模は変わっても、決済に必要な金の量は変わりません)そのようなものであっても、「平価切下げ」により、金本位制で縛られている自国通貨の発行量を増加し「デフレ不況」を緩和できるというメリットを享受することはできます。
Ddogさん:では、自国通貨安政策をとらない国があれば、その国は競争力を失うわけですよね。少しでも競争力を持ちたい国が存在する限り、通過安競争は生じ易いということでもあるわけですね。デフレ経済下では不毛な切り下げ競争は繰り返されることは理論的にありうることになります。
A2:
私の説明部分は、競争力ではなく、通貨量の増加を通じてのデフレ傾向の緩和を述べた部分です。(競争力についてはA1を参照してください)
>デフレ経済下では不毛な切り下げ競争は繰り返されることは理論的にありうることに
>なります。
為替変動相場制では「為替レート切下げ競争」ができません。
ちなみに70年以前の為替固定相場制を考えてみます。
この制度であれば、“実質的な”「為替レート切下げ競争」が可能です。
どうやるかと言えば、比較生産性をより高めるか比較インフレ率をより低く維持する政策です。
1ドル=360円を条件とし、
ある時点の自転車価格が36000円と100ドルだとし、それぞれが生産性を上昇させたことで、1年後の自転車価格が30000円と90ドルになったとします。
最初の時点の日本の自転車メーカーは、1台100ドルで米国に輸出すると36000円の手取りになります。(利益は0円です)
1年後の日本の自転車メーカーは、1台90ドルで米国に輸出すると32400円の手取りになります。(利益は2400円です)
固定相場制の時代はインフレの時代でもありますから、実態に即して価格が上昇した例で説明します。(物価変動は生産性と通貨流通量の関数です)
ある時点の自転車価格が36000円と100ドルだとし、それぞれ物価が上昇し、1年後の自転車価格が38000円と110ドルになったとします。
最初の時点の日本の自転車メーカーは、1台100ドルで米国に輸出すると36000円の手取りになります。(利益は0円です)
1年後の日本の自転車メーカーは、1台110ドルで米国に輸出すると39600円の手取りになります。(利益は1600円です)
このように、世界的に「一物一価」になるような完全自由貿易が行なわれていて固定相場制であれば、生産性をより高く上昇させるかインフレ率をより低く抑えることで、自国通貨の為替レートを実質的に安くすることができます。
(生活レベルを落とさないでインフレ率をより低く抑える方法は生産性の上昇しかありませんから、固定相場制では、生産性の上昇こそが為替レートを実質として安くする手段ということになります)
変動相場制では、比較生産性を高めて比較インフレ率を低く維持する政策をとることで為替レートが高くなる論理が働きます。(逆方向に動くので間違わないように)
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Q3:
あっしら:「通貨切り下げ」を政策を通じて行なう手法としては「プラザ合意」のような政治的デタラメもありますが、基本的には、自国通貨への需要(国内への投資)を抑制する金利低下政策になります。(米国など外国が高金利政策を採ることも同じ結果ですが、主体的な「通貨切り下げ」ではないので除外します)これは、あらゆる国家が金利0%になれば、この政策による「通貨切り下げ」競争は終わります。
Ddogさん:ところが、人類の歴史上初めて短期金融市場においてマイナス金利取引が日本で成立した。そして、政策金利もマイナス金利の実施も検討されています。不勉強で恐縮ですが、今までの既存の経済学でマイナス金利の概念は存在したのでしょうか?手元にある経済学関連の書籍では見当たりません。あっしら経済学ではどう説明されるのですか?
A3:
「短期金融市場においてマイナス金利取引が日本で成立した」といっても、外国為替取引が介在していて、単独の取引で発生したわけではないはずです。
たとえば、円は持っているがドルは持っていないという日本の銀行を考えます。
ドルを借りて他の経済主体に貸し出しをしたいと考えた日本の銀行が国際的に借り入れを行なうと、ジャパンプレミアムという上乗せ金利が要求されます。
それならば、ドルを保有していて円を借りたいという別の金融機関(たぶん外資)を見つけ、日本円の貸し出し金利はマイナスでいいから、ドルの借り入れを通常(プレミアムなし)の金利でドルを貸して欲しいという交渉は経済的に合理的な行為です。
ジャパンプレミアム>|マイナス金利|であれば、円がマイナス金利になるドルとの相互貸し出しでも合理的な経済行為です。
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Q4:
あっしら:もう一つは、積極的な対外投資を促すことで円安に誘導するという方法が考えられます。既に5兆円ほどの対外投資があるので、それを上回る対外投資を実現しなければなりませんが、それが行なわれれば円安方向に変動するはずです。しかし、これは、国内で使われる通貨量がさらに減少しかねない要因でもあります。ドルなどに転換した日銀券を貸し出しできればそれを補えますが、ただでさえ貸し出し残高が減少している状況ですからそれが実現できずに、デフレが深化する可能性があります。この場合は、円安により輸出拡大&輸入物価上昇というインフレ要因と国内で使われる通貨量が減少するというデフレ要因のせめぎ合いになり、明確にデフレを解消できるとは言えません。
Ddogさん:円安による国内で使用される通貨量(需要)の減少が問題とされてますが、輸出増加に伴う乗数効果で、需要の喚起効果が大きいと判断されれば、通貨安政策は有効ではないか?
A4:
円安が、高付加価値製品を生産し輸出比率が高い企業の売上・利益を増加させることは間違いありません。
しかし、現在の世界では、それが輸出量の増加ではなく輸出額の増加で実現されることを考慮しなければなりません。(輸出量の増加は輸出対象国の経済を損なうので、日米貿易交渉の歴史を顧みればわかるようにほとんど期待できません)
それぞれの国が“国益”を追求しているならば、貿易は管理(保護)貿易になります。
円安は、同じ量を輸出した代金1億ドルが110億円から120億円になるというかたちで企業の売上・利益を増加させることになります。
これでは、産業連関的な波及がないのでいわゆる乗数効果は働きません。
さらに、円安の直接的な恩恵を受けるのは輸出優良企業だけです。
そして、トヨタが1兆円もの経常利益を計上していながら、ベースアップはなしでボーナスだけ満額回答した程度ですから、輸出金額の増加が国内の需要拡大につながることもあまり期待できません。
結論的に言えば、輸出優良企業の国内需要増加効果>輸入物価上昇により実質国内需要減少効果でない限り、円安が国内需要を喚起することはありません。
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Q5:
あっしら:ずばり円安だけを実現するのは「プラザ合意」のような強引な政治的手法しかありませんが、そのためには「プラザ合意」と同じような"国際協調"が必要です。このような"国際協調"を日本政府が引き出せるかどうかという問題を脇に置くとしても、"国際協調"ですから、「通貨切り下げ」競争という前提にはふさわしくありません。
Ddogさん:ニクソンショック以降国際協調といいつつアメリカのご都合で為替は変化してきたと認識しています。円安誘導が日米共通の利害が一致しつつあると観測しているので、現在ユーロの独歩高、円安ドル高が進行しつつあると判断します。もっともフローの資金は豪ドルカナダドルスイスフランへ主要三通貨より資金は流失中です。
A5:
米国は、「プラザ合意」と90年代中期を除き、経済論理で落ち着くドル価格水準よりも常に高めを志向したのであって、一概にご都合主義でドルレートをいじってきたとは考えていません。
米国支配層は、ドル安を政治的に実現した「プラザ合意」を、80年代前半のドル高政策とレーガノミックスによる“双子の赤字”の拡大に焦って実施した誤った政策だったと反省しているはずです。
(「プラザ合意」で、“双子の赤字”はさらに拡大し、輸入物価の上昇からインフレ率も高くなりました)
90年代中期の“異常な”円高=ドル安政策は、企業収益の悪化を通じての日本経済破壊であり、95年以降の日本からの大量の投資を招き入れる下準備だと受け止めています。(円高=ドル安期に日本の投資家が大挙して対米投資に走っていれば、米国支配層が焦ったと思いますよ(笑))
>円安誘導が日米共通の利害が一致しつつあると観測しているので、現在ユーロの独歩
>高、円安ドル高が進行しつつあると判断します。もっともフローの資金は豪ドルカナ
>ダドルスイスフランへ主要三通貨より資金は流失中です。
米国にとっての円安誘導利益は、日本からのドル還流だけです。(財務省は円高阻止を大義名分にドル買い介入をしてくれ、日本の投資家は円安傾向のときに安心して対米投資を拡大する傾向にあります)
日本にとっての円安誘導利益は輸出企業の利益拡大と製造拠点の海外移転を緩和することですが、「デフレ不況」が続く限り、輸出企業の利益拡大は国内需要の拡大に貢献せず、中国との人件費比較から海外移転がとまることもないと見ています。
ドル高政策は米国の連邦政府赤字拡大・株安傾向・住宅バブル崩壊・貿易収支赤字増大などの要因で長続きせず、中長期的な傾向としては、ドル安になると考えています。
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Q6:
あっしら:経済論理として「通貨切り下げ」を実現する方法は、諸外国以上にインフレ率を高める経済状況を生み出すことです。 (デフレ解消のために「通貨切り下げ」というのに、インフレにしなければならないのというのは自己矛盾です。しかし、財の交易条件という経済論理で「通貨切り下げ」を行なう手法はこれしかありません。逆に言えば、諸外国以上にデフレ率が高い国民経済の通貨の為替レートは高くなって当然ということになります) デフレ解消がテーマなので、インフレを通じた「通貨切り下げ」を説明してもあまり意味がありませんが、そうなる論理を簡単に説明します。 変動相場制で1ドル=1円だと仮定します。 米国はインフレ率が0%だとします。日本は財政支出を拡大させて5%のインフレを実現し、10円の自転車が15円になったとします。
Ddogさん:つまらないことで、申し訳ないが5%のインフレでしたら、10.5円ですね。年率50%のハイパーインフレでしたら1年で15円ですね。それとも年率5%のインフレが8年半続いた場合15円になりますね。
A6:
失礼しました。
インフレ率と価格の関係はご指摘の通りの誤りです。
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Q7:
あっしら:日本のインフレの進行とともに、日本は貿易収支が悪化する方向に進み、米国は貿易収支が改善される方向に進みます。この過程を通じて、為替レートは1ドル=1.5円に調整されるはずです。(金融取引や投機はないとしてですが、あったとしても中長期的にはこの水準に収斂します)
Ddog:さて、あっしらさんは現実の経済にも精通されているはずだが、以下現実の今日経済を私が分析した考え方は、いかがに思います?
中国人民元と米ドルは連動しているので、日本から見た場合、米中を一つの相手国と考えては無謀だろうか?仮にドル国とした場合、アメリカは、ドル国の第三次産業と第一次産業。中国はドル国の第二次産業と、認識して考えては無謀だろうか?日本から見た場合そのように見える。
そう考えた場合…
A7:
>中国人民元と米ドルは連動しているので、日本から見た場合、米中を一つの相手国と
>考えては無謀だろうか?
無謀ではなく、中国の国内需要が本格的に拡大するまではそのように見たほうが日本経済の見通しはよくなります。
ただし、日本の国際企業は、中国を生産拠点として日本への持ち込み(輸出)まで拡大しているので同一視はしないと思います。この点で、中国と米国の位置付けは違います。
(米国で製造したものは北米向けが主で、日本に持ち込まれるのは限定的です)
ここに、国民経済的利益と個別日本企業利益の対立が現れています。
部品や資本財を中心とした対中輸出も、中国の対米輸出に連動しており、中国を通じた日本の対米輸出と考えることができます。
中国を日本企業の対米輸出補完拠点や中国向け生産拠点とすることには問題はありませんが、中国を日本市場向け生産拠点としたり、日本が貿易収支黒字を維持できない構造にすることは大問題です。
>仮にドル国とした場合、アメリカは、ドル国の第三次産業と第一次産業。中国はドル
>国の第二次産業と、認識して考えては無謀だろうか?日本から見た場合そのように見
>える。
米国が中国を日本よりも安い価格で工業製品を供給してくれる国と位置付けていることは確かです。
この意味から、以前より、米国は“人民元安”をことさら問題視しないと説明しています。
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Q8:
あっしら:日米で水平分業が構造化しているのであれば、このような為替レート変動がなくとも、高い日本製品を買わなければならなくなる米国が、意図的に為替レートを1ドル=1.5円に調整するはずです。(米国は、4千億ドルもの貿易収支赤字を計上しているように、絶対的な供給力不足状態にあります)
Ddogさん:ドル国と日本はある種の水平分業は成立しているように思える。となれば円安ドル高は成立する。現状米ドルは円以外の通貨に対し弱ぶくんでいる。通貨切り下げ競争とは、均等に進行すると思わないが、やがて、ユーロ高ドル安が進行した場合どこかで是正する動きにでるでしょう。ユーロ高ドル安は米国の筋書きである。
A8:
A5を参照してください。
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Q9:
あっしら:自国通貨安で交易条件は改善するのかインフレを起こして為替レートを安くさせても、実質コストは変わらないので国際競争力が高まるわけではありません。
また、インフレを起こさずに為替レートを安くしたからといっても、必ずしも国民経済総体の国際競争力が高まるわけではありません。意図的な円安が国際競争力の上昇に貢献することもありますが、アジア諸国とのあいだで水平分業が進んだ現状においては、輸入財の価格上昇が国際競争力を打ち消してしまいます。(一部の輸出企業は好条件を手に入れますが、それで得た利益は現状のように再投資に回らない可能性が高いのです)「円安信仰」は、原材料のみを輸入し高付加価値財を国内で生産しているような時期にのみ通用するものです。
Ddog:あっしらさんの円安インフレ待望論は、そのような認識なのでしょうか?
円安インフレの効果は、先にマイナス金利導入と同じ効果です。滞留したフローの資金を再び流通するようになる効果を齎す。また、水平分業した工場を再び国内に呼び戻すことも可能でしょう。
A9:
「通貨切り下げ競争」がテーマの書き込みで、「円安インフレ待望論」(というより「円安デフレ不況解消論」)批判を主目的とはしてません。
「円安デフレ不況解消論」の虚妄は、90年以降の日本経済の歩みを顧みてもわかることです。
94年には1ドル=80円まで達した95年までの円高=ドル安期に比較すれば、それ以降から現在に至るまでは円安期にあると言えます。
昨年初めには、1ドル=130円という円安にもなっています。
日本経済がデフレ・スパイラルに陥ったのは、円高期の93年から95年の期間ではなく、その時期に較べると円安傾向になった97年以降です。
これで、円のレート変動がデフレと直接関係ないことがわかるはずです。
また、中国と日本の人件費は、技術者レベルで3倍から4倍、一般勤労者レベルで20倍から30倍と言われています。1ドル=200円になったからといって、従来の“経済理論”だけで中国から日本に戻ってくるとは考えられません。(経済論理の修正や価値観と政治的判断の変更が必要だという意味です)
現状の“経済理論”や価値観のままであれば、円安になっても、徐々にであれ中国への移転は続くと見ています。(開発センターまでも中国に移転する動きがあるのは極めて危険です)
さらに、食糧&製品そして資本財&中間財の輸入比率が高まっている交易構造で円安になれば、“可処分所得が増加しない限り”、必需財に振り向けられる可処分所得の割合が増加し、利便財や奢侈財はより売れなくなってデフレの圧力にさらされることになります。
(利便財や奢侈財のメーカーは、輸入物価が上昇しコストがアップしたにも関わらず販売価格に下落圧力がかかるという収益悪化の状況に陥ります)
“可処分所得が増加しない限り”、円安で生じる輸入物価上昇のある程度は物価上昇に結びつくとしても、輸入物価上昇によるコストアップのある部分は利益の減少につながることになります。
日本は10兆円を超える経常収支黒字があり、税制的にも可処分所得の増加を通じて国内需要を増加させる余地があります。
円安が輸出量の拡大にほとんどつながらない現状での円安政策は、輸出企業の利益拡大に貢献するだけとも言えます。
もちろん、円安を望んでも、米国ではない日本が経済論理を超えた円安政策を継続することはできないという問題もあります。
円安を期待している人に言っておきたいのは、あと数年で経済論理的に円安を迎え、日本経済が悪性インフレに苦しむことになる可能性が大きいということです。
中国への生産拠点移動と中国企業自身の生産性上昇が、日本の貿易収支を赤字に転換させると予測しています。
貿易収支の赤字は、国内供給力の絶対的な不足を意味します。
このような構造で国民生活の維持や企業の存続を図ろうとすれば、赤字財政支出の拡大が求められることになります。
(歴史的な国民生活レベルを維持するために必要な供給がないということは、歴史的な国民生活レベルを維持するために必要な需要もないということですから、生活レベルを維持するために需要(可処分所得)不足を補おうとしたら赤字財政支出を拡大するしかありません)
そうなると、円安が進めば進むほど輸入物価の上昇で需要不足が拡大し、それを補うために供給の裏付けがない通貨流通が増加します。(赤字財政支出を通じて)
これは、需要>供給というインフレの加速要因を意味しますから、CPI(消費者物価指数)を上昇させることになります。
CPIの上昇は、これまで説明してきたように、円安を誘発する要因です。
「貿易収支悪化→円安→物価上昇→円安→貿易収支悪化」という悪性インフレのスパイラルに入ることになります。
(1ドル=300円の円安になっても、中国のほうが低コストで生産できます。人件費の安さは緩和されますが、中国が日本から輸入する中間財や資本財は割安になります)
これは、長期的にドル安の道をたどってきた70年以降の米国の歴史を顧みればわかることです。(360円から120円と1/3になっています)
米国経済が悲劇的にならなかったのは、国際基軸通貨国&覇権国家ということから資金が還流し続けたこと、端から底辺層として生きていくと達観している人が多くいたからです。(還流したドルによるファイナンスで輸入を賄う限り、ひどいインフレにもなりません)
国際基軸通貨国ではなく中流意識を持つ国民で満ちた日本が円安に陥り貿易収支赤字になれば、悲劇的な状況になります。
貿易収支の黒字を維持し比較生産性も高い現在の段階で経済論理と価値観価値観をきちんと捉え直すことを通じて「デフレ不況」を解消しなければ、日本経済は瀕死の状態に陥ることになります。
>円安インフレの効果は、先にマイナス金利導入と同じ効果です。滞留したフローの資
>金を再び流通するようになる効果を齎す。また、水平分業した工場を再び国内に呼び
>戻すことも可能でしょう。
そうなる論理を説明していただければ幸いです。