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『忙しい中、ご回答いただきありがとうございました。』( http://www.asyura.com/0304/dispute10/msg/148.html )に対するレスです。
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houさん、丁寧なレス痛み入ります。
>デフレに陥った原因は、国が低生産性間接金融過剰債務大企業をまもっていたからと
>自分は考えているんですけど。
>バブル時期にデットストックが供給過剰を作り出して需要が消化しきれない状況に
>あったと。
デフレに陥った直接の要因は、バブル崩壊による需要の減少と過剰債務(=過剰不良債権)を抱えた銀行の「信用創造」機能劣化です。
バブル期に右肩上がりの推移を見込んで店舗を含む設備投資に励んだのですから、“供給過剰”状況に陥ったのは確かです。
1兆円の預金から3兆円の需要を創造することもできる「信用創造」機能が劣化することでも需要縮小が起きます。
赤字財政支出の縮小と“金融不安”が同時に起きた97年が大きな曲がり角です。
それまでは、「信用創造」機能の劣化を赤字財政支出の拡大で補ってきました。
「低生産性間接金融過剰債務大企業」を破綻させなかったことがデフレを深化させたかどうかは疑問です。(「低生産性間接金融過剰債務大企業」は銀行業・建設業・流通業・不動産業・証券業が中心)
まず、「低生産性間接金融過剰債務大企業」を破綻させないことにより、そうではない同種企業の収益性を傷付けたことは事実です。
「低生産性間接金融過剰債務大企業」が破綻していれば、価格競争も緩和され、その分の売上がそうではない他の同種企業に回ることを通じていわゆる生産性が上昇し、利益も増加したはずです。
しかし、「低生産性間接金融過剰債務大企業」が生き残ることで、人件費や賃貸料などの需要維持を果たしたことも事実です。
「低生産性間接金融過剰債務大企業」を破綻させてもそこから吐き出させる失業者を吸収する既存企業や新規企業が存在すれば国民経済がうまく回転できますが、それがそのまま失業者(未就業者)の増加につながる構造になった90年代においては需要減となるので、デフレ解消にはつながりません。
「バブル崩壊」が需要減退を生じ、バブル期に行なわれた設備投資や不動産投資が過剰になったのですから、「低生産性間接金融過剰債務大企業」を破綻させればそのまま失業者(未就業者)の増加につながってしまいます。
これは、現実の歴史過程よりも「デフレ不況」をより苛烈なものにしたはずです。
日本の建設業や流通業が、諸外国の同種企業に較べて生産性が低いとも言えません。
一人当たりGDPが高いということは、平均給与が高いということでもあり、そのような条件下で日本の建設業や流通業は生産性を上昇させてきました。(銀行や大型流通業が商売に長けていないことは認めますが..)
建設業は、低生産性ではなく、公共事業に依存する需要の割合が高いことやバブル期に過剰利益を上げそれを“開発投資”に振り向けたことと借金体質が混ざり合って苦境に陥っていると考えています。
(外国企業が日本で建設事業を行なえば日本企業よりも生産性が低いはずです。だから、彼らはコンサルタントや設計でしか進出してきません)
流通業も、カルフールやブーツなどの苦戦や撤退を見ればわかるように、外国企業よりも生産性が低いわけではありません。(日本で店舗展開する限り、不動産価格や人件費は同じ条件になります。不動産価格が下がってから進出した外資流通業がうまくいっていないのですから、彼らの生産性はたかが知れています)
バブルの後始末を95年頃までに完了し、所得税制を変更し、「資産デフレ」を放置し、公共事業重視の赤字財政支出を徐々に変えていっていれば、97年以降のデフレ・スパイラルは避けられていたと考えています。
(90年代の公共事業は地価対策に重きを置いたもので、あの膨大な公共事業投資も、建設業のフローにそれほど貢献していません)
不良債権問題を解消したからといって「デフレ不況」が解消されるわけではありませんが、今なお不良債権問題を解消していない日本政府は無能のそしりを免れません。
>バブル崩壊後は国が財政・法律でささえていたが、民需拡大でデットストックを回避
>することをしなかったために、貯蓄にまわり、銀行もそれを積極的運営できず、国債
>にまわったためデフレになったと考えるなら、第三次産業(労働人口の約三分の一)
>低生産がデフレを引き起こした原因ではないのかと考えます
民需拡大ができなかった原因は、第三次産業の低生産性ではありません。
不況のなかで、優良企業までが人材派遣やアウトソーシングに励んで人件費コストを引き下げようとしたことが、民需拡大を阻害した要因です。
(自分の会社の生産性を上昇させようという経済行動が、国民経済総体の需要を減少させたのです。人材派遣やアウトソーシングを担う企業もコストダウンを強いられているので、それらに雇用されている人たちの可処分所得は低下しています)
第三次産業は、低賃金移民を認めない限り、基本的に輸入代替ができません。
第三次産業が国民経済の循環構造で不可欠のものであれば、低生産性であれば“高いコスト”に見合う支払いがトヨタなど利益を上げている企業から行なわれます。
低生産性は、利益を得られない条件であっても、デフレを招く条件ではありません。
貯蓄は、ご指摘のように、「信用創造」機能が活きていれば貸し出しを通じて需要になるのでことさら問題になりません。
貯蓄が国債に回っても、使われないお金が財政支出を通じて使われるのですから、政府債務返済という将来の問題を脇に置けば、問題ではありません。
貯蓄はストックですから、それを消費にまわして需要増加に振り向けたとしても、ストックが底をついたときにその効果はなくなります。ストックである貯蓄が、フローに回っていないことが問題であり、そうなった主要因が銀行の過剰債務(=不良債権)問題です。
日本の経済苦境の最大の要因は、フローとして使われる通貨量が減少し名目GDPが縮小していることです。
>あとは、民間需要が支えになるがもともと、サービス業は
>多くの人を雇っているが、人ばかりでその資源を有効に使っていないという批判がバ
>ブル時期からあった。
>その生産性を引きあげてもいなかったため、まずは物価の値下がりという局面から落
>ちていき、そして国策として第4次産業とともに援助金を交付して、不良債権への引
>き当てを遅らせてしまったために、供給過剰にデフレに落ちたのではないかとおもっ
>ているのですが。
製造業のように機械化で生産性を上げることが難しいサービス業は、多くを人に依存しています。(サービス業で生産性を上昇させる早道は、米国のマックのように低賃金で人を雇用することです。しかし、それは米国のように資金流入がある国民経済は別として、総需要の減少を招きデフレ要因になります)
そうである限り、一人当たりGDPが高く不動産価格も高い日本でサービス価格が高いのは自然の理です。
もともと、製造業の生産性が上昇することで、国民経済におけるサービス業のウエイトが高まるものです。
製造業の生産性が上昇することで、それまでは稼いだお金の90%を財の購入に振り向けなければならなかったものが、80%で済むようになります。
可処分所得のこのような余裕が、できるだけ楽をしたい、もっと快楽を貪りたいという経済行動をもたらすことで、サービス業が隆盛します。
前回も書きましたが、生産性を引き上げることは、需要額規模が同じであれば、供給過剰につながるものです。
「その生産性を引きあげてもいなかったため、まずは物価の値下がりという局面から落ちていき、そして国策として第4次産業とともに援助金を交付して、不良債権への引き当てを遅らせてしまったために、供給過剰にデフレに落ちたのではないかとおもっているのですが。」の論理をもっと詳細に説明していただければ幸いです。
>また、今の日本の市場規模になれば民間需要は探すものだと思うんですけど。
>公的需要は量がかせげますが。
名目GDPが縮小し実質金利が高い「デフレ不況」下での各企業は、需要(売上)は減らさないようにすることで精一杯になります。
(市場規模という絶対量はこの問題に意味はありません。経済は、基本的に変動が問題です)
現在の国債(政府借り入れ)システムである限り、公的需要を拡大することは無理です。
公的需要を拡大させて一時的に「デフレ不況」を緩和できたとしても、そのために行なった借り入れを利息付きで返済するための増税により、より深刻な「デフレ不況」に逆戻りします。
日本経済は10兆円を超える経常収支黒字ですから、所得税制を変更するとともにそのお金がきちんと経済活動に使われるようにすれば、公的需要が現状維持でも「デフレ不況」を解消することができます。
それがスムーズに実現できるようにするために不良債権処理が必要なのです。