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◆環太平洋地域の国際複合一貫輸送を強化
◆常にチャレンジャーの精神で
◆バランス感覚のある企業を目指す
◆月に約10通の社長メッセージ
◆わが青春の地・ニューヨーク
◆環太平洋地域の国際複合一貫輸送を強化
日本メーカーの製造拠点の中国シフトがさらに加速化していますが。
辻 本年3月に中国の上海に、当社の100%出資で現地法人・鴻池物流(上海)有限公司を設立しました。出資金は160万米ドル。5400平方メートルの保税倉庫を拠点に、倉庫保管、通関、配送、流通加工、フォワーディング、国際複合輸送を行います。日系企業を中心に、繊維、工業製品、電子部品、雑貨などを取り扱います。中国ではほかに、北京、青島、蘇州、深、大連、香港などにも拠点を置いています。
中国物流の今後についてどのような展望をお持ちですか。
辻 今の中国は約40年前の日本の姿にそっくりです。08年に北京でオリンピックがあり、10年には上海で万博があります。国民総生産は年率約7〜8%ずつの成長を遂げています。物流市場としてまだまだ成長する可能性は高いと予測しています。
ほかの地域でも国際物流に力を入れています。
辻 中国のほか、ベトナムのハノイ、ホーチミン、インドネシアのジャカルタ、フィリピンのマニラ、シンガポール、米国のシアトルとロサンゼルスにも拠点を置いています。特に、環太平洋地域における国際複合一貫輸送を強化しています。私が社長に就任したころ(89年)は、国内で港湾運送程度のことしかやっていませんでした。現在は約200億円、全体の売り上げの約15%を占めるまでに成長しました。
環太平洋、アジアという地区を指す場合、地理的にどの辺りまでを守備範囲とお考えですか。
辻 私の駐米経験から得た感覚では、米国のロッキー山脈の西側はアジア経済圏に入ると思っています。そこから向こうの東側は別の経済理念が支配していると思います。米国での当社の分水嶺は、ロッキー山脈です。今のところ米東海岸への本格的な進出は考えていません。米国での経験から、ニューヨークやボストンの独特のビジネス感覚の厳しさを身に染みて知っています。
◆常にチャレンジャーの精神で
冷蔵・冷凍の食品物流事業の動きが活発なようですが。
辻 3月に埼玉県北葛飾郡の杉戸深輪産業団地内に「杉戸食品流通センター」が稼働しました。続いて4月には広島県広島市の広島西風新都に「広島流通センター」が稼働しました。両施設とも、当社の冷食ネットワークの戦略的な役割を担うセンターです。前者は、首都圏でのハブ拠点としての役割を担います。後者は、中・四国地方向けのハブ拠点としての役割を担います。
この分野の今後の展望はいかがですか。
辻 冷凍食品の社会生活への浸透と同時に、物流も自然と伸びてきました。年間売上高は約200億円に達するようになりました。当社がこの分野に本格的に参入して約20年になりますが、常にチャレンジャーであるという精神を持ち続けています。
「食の安全」が、特に重視される社会風潮ですが。
辻 BSE(いわゆる狂牛病)や偽装表示の問題が社会不安を招いて以降、消費者の「食の安全」に対するこだわりは強くなっています。当社は、積極的にISOの認証取得を推進しており、品質管理には万全の注意を払っています。3月に、西部支店管轄下の「福岡食品流通センター営業所」と名古屋支店管轄下の「藤前物流営業所」でISO9001(2000年度版)の認証を取得しました。これで冷食ネットワークとしては、すでに認証を取得済みの横浜支店管轄下の「厚木流通センター営業所」、東関東支店管轄下の「越谷食品流通センター営業所」、大阪東支店管轄下の「大阪食品流通センター営業所」、東部支店管轄下の「仙台営業所」と合わせて計6拠点で認証を取得したことになりました。
医薬品物流の方の現状はいかがですか。
辻 医薬品物流と同時に院内物流も手掛けています。院内物流の方は「ホスピタル・ロジスティクス」というサービス名で商標登録し、医療器具や薬品の在庫管理、滅菌事業まで行っています。医薬品物流の年間売上高は約50億円前後で推移しています。今後が楽しみな分野です。
◆バランス感覚のある企業を目指す
今年4月から新3カ年計画をスタートされました。
辻 計画の名称を「サターン計画」と名付けました。目指す企業のイメージは「生き活きと キラリと光り 思いやる企業」です。バイタリティーに満ち、活力と躍動感があり、常に切磋琢磨(せっさたくま)を怠らず、どこか他社にないキラリと光るところがあり、人と環境に優しく思いやりのある、つまり、バランス感覚のある企業を目指すという意味を込めています。計画の基本精神は、社員『全員参加』です。
計画名の由来は何ですか。
辻 89年から始まった3カ年計画には、米国のアポロ計画に習ってそれぞれの惑星の名前を冠しています。ルナ(月)から始まって今回は第6次のサターン(土星)です。社員全員が計画に親しみを持つための工夫です。
社員の法令遵守(コンプライアンス)に対する意識を高めています。
辻 先ごろ、就業規則の中に「飲酒運転は懲戒免職」という一項を付け加えることで労働組合と合意しました。最近、数多くの超優良企業が不正や隠蔽(いんぺい)工作などにより、世間から反社会的企業として制裁を受け、厳しい業績に追い込まれ、赤字転落・大幅減益といった事態に陥っています。当社は、一時的な利得よりも、何よりも遵法精神を優先しています。
◆月に約10通の社長メッセージ
前身である鴻池組の運輸事業部門を含めると約120年を超える歴史ですね。
辻 長い歴史の中では、種をまく役割の人も、実を収穫する役割の人もいたでしょう。これからも長く続く当社の歴史の中にあって、私の時代のなすべき役割は、国際化とIT化を進めることだと信じています。
IT化もかなり進んでいます。
辻 NECと共同で構築した「Web情報公開システム」は、これまでインターネットで提供してきた在庫情報に加え、貨物追跡システムで収集した配送情報や配達完了情報などを、1時間おきに更新して顧客企業に提供するサービスで、昨年10月から稼働しています。また現在、本社、支店、営業所、関連会社など国内外約300の拠点をインターネットで接続する社内ネットワークのバージョンアップも図っています。もうすぐ完成し、「K−net2」という名前です。
インターネットで社員とのコミュニケーションを強化しているそうですが。
辻 私自身から「社長メッセージ」という形で全社員に向け自分の言葉で発信しています。月に約10通程度でしょうか。海外出張している時などは、まめに写真入りで発信しています。社内会議はすでにペーパーレス化をしています。
◆わが青春の地・ニューヨーク
ニューヨークに住んでおられたのはいつごろですか。
辻 ニューヨークに在住していたのは78年〜83年。年齢でいうと36歳〜41歳の時でした。米国はカーター政権からレーガン政権へと変わる時期で、ベトナム戦争後の疲弊した雰囲気が国中を暗く包んでいました。一昨年9月の同時多発テロで消失した世界貿易センタービルの最上階で、時々食事もしました。物流というものを戦略的にとらえる「ロジスティクス」という感覚を、一足早く米国で学びました。港のコンテナ化のすごさや、流通拠点のスケールの大きさには驚かされました。とにかく、物が始終絶え間なくダイナミックに動いています。いつかまた、あの街で仕事ができればと夢見ています。ニューヨークはわが青春の地です。
米国生活で培ったものの中で、現在の経営哲学に反映されているものはありますか。
辻 米国人は怠け者だというイメージが定着していますが、それは間違いです。よく働く米国人というのは、ものすごい量の仕事をこなします。アメリカン・ドリームという言葉がありますが、それは猛烈に仕事をして努力することによって成就されるものだと知りました。やれば結果が出る、頑張れば結果が出る、そういう経営スピリットを米国生活の中で学びました。
駐米経験のある物流トップとしてイラク戦争はどう見ますか。
辻 司馬遼太郎も言ってますが、第2次大戦の日本の敗因は、ロジスティクス戦略を軽視したことです。精神論だけで、補給路の確保もままならず、多くの兵士が餓死しました。戦争を肯定するわけでは決してありませんが、米軍のあのロジスティクス(兵たん)戦略のダイナミックさには驚かされます。今度は、戦後復興のために、あのロジスティクス力を活用してほしいものです。 (坂本慎平記者)