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国際的に問題化する「北の人権問題」をどう考えるか
頭が痛み心配だが避けられない――
人権問題は「パンドラの箱」か
北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国)の人権問題は「パンドラの箱」なのか。
ギリシャ神話に出てくる「パンドラの箱」という言葉は「開けてはならないもの」という意味で使われる。韓国の市民社会で北韓の人権問題は「パンドラの箱」のようになっている。
もちろん各市民団体も北韓の人権に問題があるということは認める。ある人権運動家は「普遍的人権の物差しで見れば北韓の人権状況がめちゃめちゃなことは事実だ。司法権の独立もいい加減だし、さまざまな連座制など前近代的な制度は、あるがままに問題提起をし、無償教育や無償医療の恵沢など一部の模範的なものはまた、あるがままに認めてやればよいのではないか」と語った。
けれども各市民団体は北韓の人権問題を公然と問題視することをはばかる。韓国社会では反北でなければ親北だとする冷戦時代の黒か白かの論理が、そのまま残っているからだ。いまなお北韓の人権問題を指摘すれば南韓社会の矛盾を隠ぺいするものとして受けとめられたり、反対に南韓社会の問題を指摘すれば「アカ」だとの非難を受ける。冷戦の論理から生じた便宜的理解の方式が北韓の人権問題の合理的疎通を阻んでいる。
世界史の矛盾が圧縮された現場
進歩的だとの評価を受けている団体や個人に北韓の人権についての見解を聞いてみると「北韓の人権の実態についての客観的情報が足りない」、「南北の和解協力に助けとならない」、「極右保守勢力に悪用されかねない」などの理由で言葉を遠慮する。
北韓の人権問題は「世界史の矛盾が圧縮された現場」だ。ちょっと見には簡単に思われる問題の中には、普遍性や特殊性のような哲学的概念が衝突し、国際主義と民族主義という国際政治的概念も対立している。社会主義の価値、北韓体制に対する交差する評価は冷戦時代の左右のイデオロギー対決の姿もある。さらに対北政策を国内政治の下位変数に従属させた国内政治勢力同士の政略的争いも激しい。
このようなわけで国内で北韓の人権に対する論議が行きつ戻りつ堂々めぐりをしている反面、最近国外では北韓についての人権論議が急浮上している。
特に4月16日、第59次国連人権委で北韓の人権改善のための決議案を採択したのを契機に、北韓に対する国際的圧力が高まるものと見られる。今後、北韓の人権状況は国連人権高等弁務官室をはじめとする人権機構の持続的監視を受けることとなり、国連人権委では優先議題として取り扱うことになる。最近の国連安保理での北韓の核問題の論議に続き、国連人権委の北韓人権決議案の採択は国際社会が安保問題と人権問題を同じように重要な比重で扱う可能性を示唆している。このような気流を反映したかのように米国では、北京での北・米・中三者会談で米国が北核問題ばかりではなく北韓の人権問題も取りあげるべきだとの主張が出てきた。
「全国民主主義寄付財団(NED)」のカール・ゴシュメン会長は4月17日付「ワシントン・ポスト」に寄稿したコラムで「万一、3者会談が核問題の解決にのみ集中するなら失敗だ。安保の危機は、問題の核心である北韓政権が住民たちに行っているひどい犯罪を扱わなくては永遠に解決できない」と語った。彼は「多者間の対話は北韓の人権問題を国際的議題に含めさせる、かつてない機会を提供している」と主張した。
「人権の普遍性」めぐる先鋭な論争
最近、米国などは3者会談を前に北韓の人権問題を怒りをもった言葉で集中的に非難した。スコット・カーペンター米国国務省人権担当副次官補は4月1日、ワシントン外信記者センターで「北韓は世界で最も暴圧的で身の毛もよだつ体制のうちの1つであり、最大規模の監獄体制」だと語った。ジン・コクフェトリック米国人権担当大使も4月1日、国連人権委で「劣悪な人権状況や甚だしい食糧難は北韓を地球上の地獄そのものに仕立てている。国連は一層深まる北韓の人権侵害に積極的に対処し、北韓の指導者たちに責任を問わなければならない」と追及した。米国は3月31日に刊行した2002年国務省年例人権報告書において「北韓では裁判なしの死刑や失踪事件が相次いで報告され、多くの人々が思いのままに政治犯として拘禁されている」と非難した。
北韓当局は、外国のこのような問題提起を内政干渉だと規定し、「ウリ(われわれ)式の人権」概念があると反論する。同時に北韓は積極的に「解明」もしている。95年に刑法の改正によって死刑の条項数を33個から5個に減らし、死刑宣告が可能な年齢を17歳から18歳に引き上げた。また98年の改正憲法に居住・旅行の自由を新設し、01年の国連人権委で市民的、政治的権利についての人権報告書を16ぶりに提出するなど国際人権体制に参与している。
北韓の人権関連の論議において「実態」ばかりではなく人権の概念や「人権の普遍性」の命題も先鋭な論難の種だ。人権は、われわれすべての人間が人間であることによって備えられている自然にして普遍的な権利だとする「素朴な」考えは道徳的に訴える力があるにもかかわらず、概念的、歴史的、政治的側面の批判に揺らぐのはありそうなことだ。
人権の概念は▽生命権、自由権、平等権、幸福追求権、宗教・言論・集会・結社の自由など市民的、政治的権利である第1世代の人権▽教育権、労働権、最低生活保障など経済的、社会的、文化的権利である第2世代の人権▽民族自決権、平和に対する権利、発展権など集団的権利である第3世代の人権に分かれる。
米国や欧州は国家権力からの消極的な自由や政治的権利である第1世代の人権だけが本物の人権だと主張する傾向を示す。これに対して開発途上国や社会主義の国々は第2世代や第3世代の人権が本当の人権だと主張し、人権の概念は「内在的不確定性」を持っている。これは北韓ばかりではなく、中国の人権に関する論争でも争点となった。
例えば、天安門の事態以後、90年代から米国は中国の人権問題を国連人権委に議題として上げようとし、中国はこれを阻むために深く心慮した。世界的な人権団体である「ヒューマン・ライト・ウォッチ」は97年の国連人権理事会で中国の人権問題についての決議案採択に関連した中国と西欧諸国の外交的努力を分析した結果、理事会のどたん場でドイツ、フランスなどは中国が押しだした経済的誘因策に簡単に応じる反応を示し、中国の人権問題に対する西方諸国家の態度は、ひとことで言えば「偽善」だとの結論を下したことがある。
「平和への脅威に悪用」を憂慮
ジャック・ドナリー米デンバー大国際大学院客員教授は『人権と国際政治』で米国が89年までは人権に対する関心を冷戦に従属させていて、90年代に入って初めて米国の外交政策において人権に対する関心が拡大・深化されたと分析する。彼は米国が自由と人権の追求を反共主義と混同していると主張した。
最近、米国やヨーロッパが北韓の人権をとみに問題視している背景は何なのか。米国は公式的に「人権は時と所を分かたない普遍的価値である上に、北韓の人権状況がもともと悪いため」だと説明する。現実においてこのような模範解答式の説明は説得力が落ちる。むしろ北・米交渉で有利な位置を占めようというねらいであり、「人権」を名分として「北韓人民の人権」を締めつけるだろうとの反論も、中途半端なものではない。
米国がイラク戦圧勝の余勢をかって北核問題の解決のために本格的に北韓に対する圧迫を強化する可能性が大きいとの指摘が少なくない。政府関係者は「ブッシュ行政府が最近、北韓の人権問題を積極的に論じているのは北・米交渉でカードの1つとして使おうという布石の可能性がある」と分析した。
実際、人権各団体は北韓の人権問題が韓(朝鮮)半島の平和を脅やかす道具として悪用されることを最も心配している。「人権運動サランバン」の北韓人権決議案採択に対する論評は、その代表的例だ。「イラクが米国によって不法占領され、またもや韓半島に戦争の黒雲が垂れこめている現時点で、米国の北韓侵略の名分として悪用されかねない文書が採択されたことは大きな心配を作り出している。これまで『悪の枢軸』を云々し、対北圧迫を加えてきた米国が、この決議案を押し立てて韓半島に戦争を引き起こすなというわけがない。イラク戦でも確認されたように、米軍が再び『解放軍』を自称して韓半島を血の戦場にするなと言うはずがないだろう」。
オ・チャンイク人権実践市民連事務局長は「北韓の人権に問題があることは、その通り見なければならないが、これまでこの問題を余りにも政略的に扱ってきた」と指摘する。彼は「北韓の人権問題を『パンドラの箱』と言ったが、そうであればあるほど冷静に見なければならないのではないかの。ちゃんと食べて暮らせてこそ市民的、政治的権利も行使し、文化的権利も行使できるというものではないのか。経済制裁や封鎖によって暮らしの基本的条件を損なわせ、決議案を通じて国際社会が北韓に人権を強要するのは、お笑い草だ」と語った。
「極右勢力が食い物にしすぎた」
北韓の人権を強調する一部勢力は政略的利害を先行させているとの批判も起きている。野党ハンナラ党は4月17日、政府が国連の対北人権決議案の表決に加わらなかったことについて論評を出し、「あまりにも無責任で卑怯なことであり、恥辱の歴史として記録されるだろう」と語った。だがハンナラ党は4月19日、北韓の「核燃料棒の再処理進行中」との発言に対して「北韓がわれわれを対話の相手として尊重することを目に見える形で示さないかぎり、いかなる口実の対北支援もダメだ」と語った。
このような論難と関連して対北支援の活動を展開している「良き友達」は4月18日、北韓住民の生存権の保障と人権の改善が同時になされなければならないとの意見書を出した。「北韓の人権の最優先課題は北韓住民の生存権の保障だ。飢えと疾病の苦痛の中にいる人に何よりも急がれるべきは生き残ることだ。大多数の北韓住民たちにとって食糧難の解決なしには、いかなる人権改善の努力もハダで感じるのは難しいだろう」。
北韓の人権の政略的悪用への憂慮についてユン・ヒョン北韓人権市民連合理事長は「これまで北韓の人権問題を、極右諸勢力があまりにも食い物にしてきた」と冗談を語る。ユン理事長は「90年代初めまでは北韓の人権の実相把握が難しかったけれども90年代半ば以降は4千人にも及ぶ脱北者の証言や北韓を訪問した国際機構・市民団体による北韓の人権に関する陳述や証言にはほとんど違いがない。政治的理念はどうであれ真実として明らかになっている北韓の人権の現実から目をそらすことはできない」と語った。
ハン・キホン北韓民主化ネットワーク代表も「人権を政治に一くくりにして考えるべきだというのが無理な主張だというなら、人権を政治から切り離すこともできるというのは純真な考えだ。一部では北韓の人権問題を取りあげることが何の役に立つのかという向きもあるけれど、北韓の人権が国際問題になると北韓当局は公開処刑を減らし、食うためだけの単純脱北者に対しては軽い処罰にするなど、実質的な人権改善の効果が表れている」と語った。
先入見を捨てて積極的に論議を
北韓の人権問題について南側の進歩勢力は回避し、保守勢力は悪用し、北側は否認する。こうして国際社会の北韓の人権論議から、南北はまさにその当事者でありながらも避けている。7千万民族の生を脅やかす米国の北核関連施設への先制攻撃の可能性が南韓政府の統制権外であるホワイト・ハウスから流れ出てきているように、北韓の人権問題の論議も南北韓住民の意志とは関係なしに米国の先制戦略の1つの要素として転じる可能性が高まっている。北韓の人権問題について市民社会団体、政治諸勢力が冷戦の論理にルーツを持つ先入見を捨てて積極的に論議し発言すべき現実的理由が、ここにある。
「問題の核心は事実を明らかにし、また普遍的基準から問題を指摘しつつも、これを生かし根底から解消しようとする実践のレベルにあるのであって、事実についての無視や一部の事実だけを見ようとするやり方を通じた回避にあるのではない」(パク・ミョンニム延世大国際学大学院教授「韓国1950戦争と平和」から)。(「ハンギョレ21」第456号、03年5月1日付、クォン・ヒョクチョル記者)
http://www.jrcl.net/web/frame03519g.html