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姿を現わした次世代ウィンドウズ『ロングホーン』は両刃の剣か
http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20030509304.html
Michelle Delio
2003年5月8日 2:00am PT 米マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長兼最高ソフトウェア開発責任者(CSA)自身も含め、誰もが次世代ウィンドウズが天の恵みとなるのか、災いのもととなるのか、計りかねているようだ。
コンテンツ制作者はおそらくこのOSが気に入るだろう――デジタル著作権管理(DRM)技術が直接組み込まれるからだ。しかし、ハードウェア開発者はまだ不安を抱いている。新しいOSは消費者にアップグレードを促すような魅力的なエンターテインメント系の新機能が満載だと謳ってはいるが、ユーザーはDRM機能のものものしさに怖気づくのではないか?
『ウィンドウズXP』の後継で、現在『ロングホーン』という開発コード名で呼ばれるこの次世代オペレーティング・システム(OS)は、ウィンドウズのハードウェアメーカーを対象とする第12回『ウィンドウズ・ハードウェア・エンジニアリング会議』(WinHEC)に出展されている。ロングホーンは、このOSに対応するハードウェア上で動作する。原理的にOSとハードウェアが連携して、コンピューターとコンテンツを保護する――外部の侵入者からも、そしておそらくは、コンピューターの所有者自身からも。
マイクロソフト社によれば、ロングホーンのインターフェースは、コンピューターを使った仕事や娯楽、コミュニケーションにおける人々の嗜好に関する膨大な研究を反映し、改良されたという。
同社は、ロングホーンを、お気に入りのジーンズのように、くつろげる快適なOSにすると約束している。
しかし、ロングホーンの奥深くにはマイクロソフト社の『ネクスト・ジェネレーション・セキュア・コンピューティング・ベース』(NGSCB)システムの一部である『ネクサス』が潜んでいる。NGSCBは、ユーザーが外部と共有したくないデータを保護する秘密の格納場所を提供することを目的とする。
マイクロソフト社のセキュリティー・ビジネス部門で製品部門責任者を務めるピーター・ビドル氏によれば、同社は今のところ、NGSCBをロングホーンの一部として組み込む予定だという。
NGSCBは本質的には、暗号化とデータ使用許可を管理するシステムだ。キーボード入力やコンピューターから送信されるデータだけでなく、外部から入ってくるストリーミング映像や音声も暗号化する機能を持つ。
また、NGSCBの機能により、文書/ファイル/アプリケーションの所有者や作成者はその制作物の利用形態を決定できる。権利所有者が変更不可に設定していれば、ユーザーはアプリケーションのコードを改変したりドキュメントの内容を変更したりできなくなる。権利所有者の設定次第では、コピも禁止される。さらに電子メールやファイルの転送や印刷も、許可がなければできなくなるかもしれない。
個々の許可は、ユーザーごとに設定されるか、あるいは料金プラン別に設定されるかもしれない――たとえば、50セントで販売されるMP3ファイルではCDメディアへのコピーや他の機器への転送が許可されないが、同じ曲でも1ドル払えばコピーや転送が可能になるといったプランが考えられる。
「恐ろしい代物だ」と、ある開発者は匿名を条件に語った。「こういったくだらない許可の仕掛けを丸ごと避けるため、大勢が古いコンピューターや OS、メディアプレーヤーにしがみつく姿が目に浮かぶ。ウィンドウズを今使っているオタクたちはみんなウィンドウズ2000に固執するだろう。いずれにせよ、彼らの大半はすでに(ウィンドウズ)XPにすら魅力を感じていない」
NGSCBが個人の著作権侵犯を取り締まる「警官」として使用される可能性について記者たちから質問され、ゲイツ会長は見るからに気分を害したようだった。
「わが社は、使うか使わないかをユーザーが自由に選べるセキュリティー・システムを作っている。ユーザーが自分のコンピューターやコンテンツをどうすべきか、あるいはどうすべきでないかといったことを指図するつもりはない」とゲイツ会長。
このゲイツ会長の発言から、NGSCBはユーザー側で有効か無効かを選べるオプション機能になると推察した開発者もいたようだ。だが、NGSCBがコンピューターのハードウェアとOSの両方に組み込まれる予定のため、現時点では無効化する手段は存在しないように見受けられる。また、NGSCBに対応していないシステムでは、保護機能が正しく作動しなかったり、コンテンツを見られなくなったりする可能性もある。
マイクロソフト社はこれまで、対応するハードウェア――米インテル社が製造する『セキュリティー・サポート・コンポーネント』チップ――が搭載されていないコンピューターでもNGSCBが動作するかどうかを明らかにしていない。このチップは暗号化プロセスの多くを担っている。
インテル社はまだ、このチップセットの開発を終えていない。WinHECでのデモンストレーションでは、マイクロソフト社は、このチップセットによって処理されるはずのプロセスの一部をエミュレーションによって行ない、NGSCBの詳細については8日午後(米国時間)に発表すると述べた。
セキュリティーという観点に限定して見れば、NGSCBは――理論上は――有効な手段だ。ウイルスやスパイウェアといった望まれないものがシステム上で動作すると、ユーザーに警告を発するように作られている。
しかし、こうした警告には代償が伴う。NGSCBに準拠したコードで作成されたアプリケーションは、改竄(かいざん)を防ごうとする。コードが改変されると、システムは他のアプリケーションに警告を発し、改変されたコードとの連携を中止させる。これは、パソコン上であえて未承認のコードを実行したいユーザーにとって問題となるかもしれない。
NGSCBが個人に密着した監視システムになる可能性を秘めていることを念頭に置けば、マイクロソフト社が今年のWinHECで他に提示した主要なテーマとして、「パソコンやテレビ、携帯型のメディアプレーヤーでデジタル・エンターテインメントを楽しむためのより多くの選択肢を提供し、家中どこでも容易にデジタルメディア体験をもたらすような」機器を開発するようハードウェア開発者に求めたことは興味深い。
WinHECでは次のような物が展示され、あるいは議論された。家中のあらゆるスピーカー付きディスプレーにデジタル・メディアを送信できるホームサーバー『メディア・センター・テレビ』の試作品。オーディオファイルの音質を飛躍的に向上させる『ユニバーサル・オーディオ・アーキテクチャー』(UAA)規格と、その対応ドライバー。パソコンとメディアプレーヤー間のデジタルメディアの転送や管理を改善することを目的とした『メディア・トランスポート・プロトコル』(MTP)など。
また、デジタルメディアを楽しく円滑に移動させることを目的としたロングホーンと、コンテンツ利用を権利所有者が設定した方法のみに限定させることを目的としたNGSCBとが併用されることで生じる悪循環の可能性について考えてみるのも面白い。マイクロソフト社は、セキュリティー重視と娯楽というロングホーンの2つの特徴を等しく強調していたが、デモを見る限りまだ完成にはほど遠いようだった。
予定されている特徴の説明やデモは興味をひくが、コンピューターの機能のかなりの部分をただ目を楽しませるためだけに使いたくないと考える向きは、特殊効果の多くを無効化してしまうかもしれない。
それに対して、デスクトップは賑やかなほうがいいと思う人や、コンピューターをエンターテインメントの中心的存在だと思っている人たちにとっては、ロングホーンは新しいマシンに買い換える格好の理由となるかもしれない。マイクロソフト社はまだシステムの仕様を明らかにしていないが、目を引く新機能の多くは、相当の処理能力を持つ新しいハードウェアを必要とすることは間違いない。
ロングホーンが動作するのに十分な能力を備えたハードウェアがあれば、デスクトップに表示されたすべてのウィンドウが個別のユニットとして表示され、1秒間に何度も描画し直されているのがわかる。従来は、ウィンドウが新たにアクティブになるたびに画面を描き直す方式を採っていた。
ロングホーンのウィンドウはまた、楽しげに画面上を飛び回ったり、回転したり、反り返ったり、他のウィンドウと融合したり、他のウィンドウやコンテンツへのリンクを表示したりもする。
『マイ コンピュータ』内の各ドライブの空き容量を表示するといった、比較的地味な追加機能は上級ユーザーにも受けるだろう。加えて、『マイ ピクチャ』や『マイ ミュージック』フォルダは、独立したファイル管理アプリケーションに近い形で機能するよう改良されている。
非公式に流出したアルファ版のロングホーンをダウンロードした人なら皆知っているように、このOSにはデスクトップ上にアクティブなコンテンツを追加できる『サイドバー』が搭載されている。このサイドバーには、時計、メモ帳、よく使うプログラムやファイルがクリックで起動できるリスト、検索ツール、映像や音楽の再生リスト、ユーザーや開発者が考え得るありとあらゆるウェブサービスを追加できる。
マイクロソフト社によると、ロングホーンは2005年中に発売の予定。NGSCB対応のコンピューターはおそらく2004年半ばにリリースされるだろう。
[日本語版:長谷 睦/高森郁哉]