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こどもの日 同じ目線で見直せば 東京新聞・社説 05.05
http://www.tokyo-np.co.jp/sha/
米国の人気ロック歌手マリリン・マンソンは「洪水、エイズ、殺人…。その恐怖心が人を銃に向かわせる」と語る。世の中に不安があふれているなら、取り除くのはやっぱり大人の責任だ。
子どもたちは、忍び寄る不安に耐えている。
あしなが育英会の調査では、この春、高校へ進学した千百二十七人の遺児のうち、「自死遺児」、つまり親の自殺による遺児が百七十九人を数え、調査開始以来初めて15%を超えた。四年前の十倍という驚異的な増え方だ。
自殺の原因は「仕事」と「借金」の合計が七割に上っている。
遺児家庭の平均勤労年収は、百五十三万円余で、一般家庭の三割強。全体の二割は収入がないという。
世界に目を向けてみる。子どもたちの不安は、ほぼ絶望に近くなる。
世界では、五人に一人が一日当たり一ドルという「絶対的貧困」の中で生きている。貧困がもたらす何らかの原因で、五歳以下の子どもたちが毎日三万人ずつ尊い命を落としている。みんな、支援を待っている。
今度のイラク戦争でも、砲火の下で傷ついて逃げ惑う、子どもたちの悲しい視線をあまりにもたくさん見せられた。
豊かな国の子どもは、歩きだす未来に迷って立ちつくし、やがて地べたに座り込む。貧しい国では、地雷に足を吹き飛ばされて、わずかなパンや薬を買えずに死んでいく。大人が築いた社会の都合がそうさせる。
一年前に亡くなった「子どもの虐待防止ネットワーク・あいち」前代表の祖父江文宏さんは「子どもたちは、もっと、のほほんと生きるべきだ」とよく言った。「のほほんと生きさせてあげるのが、先に生まれた者たちの責任だ」とも。
祖父江さんは、子どものことを「小さい人」と呼んでいた。
子どもたちは「未完成の大人」ではない。ましてや大人の従属物ではあり得ない。対等な人として、自らの未来を託す個性への限りない愛と尊敬を込めたまなざしで、祖父江さんは「小さい人」と向き合った。
子どもたちが今、社会や世界に望むもの、それは同じ高さの目線なのではあるまいか。
少しだけひざを折り、「小さい人」の目線に立ってあらためて社会や世界を見渡せば、彼らの不安の正体もおのずと見えてくるはずだ。そして自らの責任と、取るべき道も。
きょう「こどもの日」。「先に生まれた者」から「小さい人」へ、「心配ないよ」と言葉をかける機会にしたい。