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(回答先: さて、ガダルカナル島のお話です。 投稿者 hou 日時 2003 年 4 月 06 日 14:37:30)
件名:《ESPIO!》 「科学無き者の最後」
●(((((((((((((((((((((( ESPIO! ))))))))))))))))))))))●
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《公安情報 ESPIO!》
■ 「科学無き者の最後」 Vol.201 04/06/03
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1.恐るべき「北米航空宇宙防衛司令部」
内閣衛星情報センターは、情報収集衛星(IGS)の軌道につい
て、打ち上げ前はもちろん打ち上げ後も、「安全保障にかかわるの
で軌道は非公開」(2003年4月1日共同通信記事)などとして
きた。
その「安全保障にかかわる」“秘密情報”を、北米航空宇宙防衛
司令部(NORAD)は
IGS打ち上げからわずか3日ばかりで、いともあっさり公開した。
http://celestrak.com/NORAD/elements/
すなわち、情報収集衛星の「2行軌道要素」が明らかにされたの
である。
http://celestrak.com/NORAD/elements/tle-new.txt
■IGS 1A
1 27698U 03009A 03094.53508910 .00020026 00000-0 77811-3 0 360
2 27698 97.3049 166.8642 0004397 325.5118 147.6355 15.26084529 1146
■IGS 1B
1 27699U 03009B 03094.54144880 .00020929 00000-0 84615-3 0 298
2 27699 97.3041 166.8546 0003578 239.8703 233.3267 15.24749190 1144
といっても、何か特筆すべき、目新しい出来事だというわけでは
決してなく、リモートセンシングの世界ではずっと以前から、ごく
常識の部類に属しているらしい。
以前から引用している松浦晋也氏が「宇宙作家クラブ ニュース
掲示板」
に解説記事を掲載している。
<参考>軌道要素
・「2行軌道要素」の読み方
http://ssro.ee.uec.ac.jp/ssro/uchuu-tsuushin/2line-elements.html
・軌道要素の解説
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/8632/Calsat32Elem.htm
http://www.jamsat.or.jp/keps/kepmodel.html
・「ケプラーの法則」によって軌道上の衛星位置が推算されること
http://www.infra.kochi-tech.ac.jp/takagi/RS_01/
http://www.infra.kochi-tech.ac.jp/takagi/RS_01/RS09.pdf
「軌道要素」を見ると、たとえば中華人民共和国のコードネーム
「JB−3」という軍事衛星(中国当局によれば「資源探査衛星Z
Y−2」)が、
http://www.sinodefence.com/space/spacecraft/zy2.asp
「情報収集衛星」と似通った高度、周期を保っていることなども分
かる。
軌道要素の公開については、国内でも数紙が報じ、韓国聯合ニュ
ースなども「North Korea Today」の欄で取り上げた。
http://www.yonhapnews.net/news/20030402/221700000020030402080330K7.html
衛星の軌道と位置をほぼ正確に推定できれば、たとえば北朝鮮や
中国が、衛星からの撮影を見越して、一定程度以上の欺瞞工作を講
じる余地も生じるのだ。
2.二つの意味
以上のような顛末から、我々は大きく二つの重要な意味を読み取
ることができる。
まず第一に、松浦氏が指摘するとおり、一部の技術スタッフはと
もかくとして、内閣衛星情報センターにしろ内閣情報調査室にしろ
、少なくとも関係省庁の幹部クラスの文官は、こうした事情をまっ
たく承知していなかったのではないか、という重大疑惑である。
すなわち、およそ宇宙に打ち上げられた構造物は、NORADに
よって探知され、軌道を解明されているという実態を、本当に知ら
なかった可能性が高い。
この推測が限りなく100%に近く正しいことは、次のような報
道状況からも明白である。
<参考>『月刊官界』2002年12月号記事
(略)高度について政府は「四〇〇〜六〇〇キロ」としか発表して
いない。随分、開きがあるが、「撃ち落されるのを防ぐという“秘
匿の観点”から幅を持たせている」のだそうだ(傍点筆者。ちなみ
に、同記事は内閣衛星情報センターの公式説明に最も近いという)。
高度もバッチリ公開されているのだから、かなりお寒い「秘匿」
状況である。いや、「頭隠して尻隠さず」というよりは、「頭」も
「尻」も隠しようがないのが現実なのだ。
世界中のほとんどの衛星等(米国のSIGINT衛星等を除く)
の軌道を米国が公表していることは、意外に知られていない。
しかし、一般人が知らないからと言って、プロフェッショナルで
あるはずの内閣衛星情報センターが知らなくてよいはずがない。ア
マチュア愛好家にとって常識であることを、もし後者が本当に把握
していなかったのだとしたら、滑稽を通り越して悲惨である。
第二の注目点は、アメリカが日本に何の配慮も示さなかったとい
うことである。関係者の中には正当にも、「衛星センターが“秘密
”というからには、米国側と軌道要素を公開しない約定でも結んで
いるのだろう」などと勘ぐった向きもあったようだ。
実際には、そんな秘密協定があった様子などまったく窺われない。
もし内閣衛星情報センターが上に記したほど愚かではなく、仮に
それに似た要請が日本側からあったと仮定して見ても、その場合は
なおのこと、米国から一顧だにされていなかったことになる。情報
収集衛星の機能など秘密に値しないと思われているのかもしれない
し、同盟関係もその程度のものだということもできる。あるいは、
穿った見方をすれば、自主開発にこだわった日本に対する、ある種
の意趣返しのようにも受け取れる。
―百歩譲ってNORADの発表は当然予め考慮に入れてはいたが、
とりあえず「秘密」にしたのだと仮定してみよう。
その場合でも、依然として辻褄は合わない。
「軌道を公開しなくても、国内のマスコミをだまくらかすことな
ど訳はない」と思い込んだのはまだ分かるとしても、中国や北朝鮮
には公然情報を読む力もないと想定していたことになり、余りにも
相手を見くびり過ぎたことになるからだ。
3.「理学と工学のセンス」以前
「いくら何でもそんなに間抜けなはずはないだろう」と首を傾げ
る読者も多いに違いない
実際、4月3日付け毎日新聞朝刊によれば、内閣衛星情報センタ
ーは、「これだけでは、衛星の軌道を正確に推定できない」として
いる。
しかし、これがまた実に奇妙奇天烈、不可解極まりないコメント
で、「2行軌道要素」によって、衛星軌道は一意的に決定されてし
まう。
「正確に推定できない」とは「現実の世界は、ケプラーのモデル
のように単純ではなく、軌道計算プログラムはその分補正を加えて
いること」を指しているのかもしれないが、いずれにせよ「ほぼ正
確」であることには変わりはない。「高度400キロから600キ
ロ」というような大雑把な話ではない。
従前の報道状況と比較すれば、「正確に推定できない」という言
葉が、苦し紛れの負け惜しみに過ぎないことが分かるだろう。
<参考>データの補正
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/8632/Calsat32Earth.htm
高次の補正を行えば、より正しい位置を求めることが可能なはず
です。
しかし、上の式を得るにもさまざま仮定をおいて式を簡略化した
り、考慮していない要素も多くあります。
また、与えられた軌道要素の精度も、その時点では衛星の位置を
正しく表すものですが、各要素が最適な値であるわけではないので
、その後の理論的な補正を長期間にわたって正しく適応できるわけ
ではありません。
現実的には、毎週新しい軌道要素が観測によって決められ提供さ
れているので、それなりの計算による補正で補い、最新の軌道要素
を使うことが最善であると考えています。
「2行軌道要素」を利用して条件を整えれば、市販の望遠鏡です
ら高度約500キロメートルの情報収集衛星を捉えて、撮影するこ
とさえできるのだ。
<参考>人口衛星の観測
http://www.urban.ne.jp/home/mishima/
以上のような不甲斐ない有様を、すなわち信じ難いほどの非科学
性を、筆者は公安調査庁勤務の体験を振り返って、相当程度の実感
を伴って想像することができる(実例は『お笑い公安調査庁』第7
章参照)。
そういう実情をいくつも目の当たりにすると、もちろん公安調査
庁ほどではないにせよ、内閣情報調査室、さらには内閣衛星情報セ
ンターも、幹部クラスに限って言えば、似たり寄ったりの状況であ
ることが容易に窺えるわけだ。
<参考>幹部の専攻分野
http://homepage3.nifty.com/argus/naicho1.jpg
http://homepage3.nifty.com/argus/naicho2.jpg
報道状況等から見ると、およそ内閣衛星情報センターの管理部長
から上、官房長官、副長官、内閣情報調査室長、関係省庁の幹部、
それに内調の事務方の相当部分も同じく、NORADの発表に度肝
を抜かれことが想像できる。国会議員なども無論、例外ではない。
松浦氏はこの点について次のように指摘している。
http://www.sacj.org/openbbs/
政策論議以前に偵察衛星は、物理的に理解すべきものです。それ
が分からないとコストパフォーマンスの判定も、ひいては導入すべ
きかの政策判断も狂います。ごくわずかの理学と工学のセンスが必
要なのです。
軌道上に上がってしまった以上、情報収集衛星をよりよく使うた
めに、官僚も政治家も理工系大学初級クラスの理学と工学のセンス
を身につけて欲しいと、私は思ってます。
まさに、そのとおりだとも言えるし、あるいは「理工系大学初級
クラスの理学と工学のセンス」以前に原因があるようにも思え、そ
れだけ一層、問題の根は深い。
4.マネージメントの非科学性
そこで、いやおうも無く思い出されるのが、以前、当メルマガで
も言及した
http://www.emaga.com/bn/?2003020067399236009660.xp010617
『敗戦真相記』である。
この本は、政治家・実業家であった永野譲が、「1945年9月
」に広島で行った講演速記をもとに、同年11月末に発表したもの
である。
「この次には、日本人が本当に地球上から抹殺されるというよう
なひどい目に遭わないとも限らない」と考えた永野は、「何が故に
我々は戦争に敗けたかという事実を反省してみて、そうして誤って
いた点は今後、断じて再び繰り返さないようにしなければならない
」と主張する。
そこで、敗北の要因として、第一に戦争目的の誤り、第二に情報
活動の未熟さ、第三に総力戦の失敗を挙げた上で、わざわざ項目を
改めて、「最も現実的に日本をギュッと参らせたのは、英米の科学
の進歩」であり、「その一つは科学兵器の進歩があまりに違ってお
ったことであり、他の一つはマネージメントの科学性の問題」であ
ると強調する。
「科学兵器の差というものは目に見えるから皆納得するが、目に
見えないで、もっと戦局に影響を及ぼしたものはマネージメントの
差」であるというのである。
「マネージメント」の欠落とはすなわち、たとえば隅田川に5本
の橋しかかける資材がないのに、漫然と10本かけようとして、結
局一本の橋もできないような非効率な資源配分や、不合理な意思決
定方式を指している。
永野の言葉をそのまま引用すると次のとおりである。
この経営能力が、また科学兵器の差よりもひどい立ち遅れであっ
て、この代表的なものが日本の官僚のやり方でしょう。日本の官僚
の著しい特性は一見非常に忙しく働いているように見えて、実は何
一つもしていないことで、チューインガムをかんだり、ポケットに
手を入れたりして、いかにも遊んでいるように見えて、実際は非常
に仕事の速いアメリカ式と好対照を見せています。
(略)
聞くところによると、アメリカのニュース劇場で東京空襲の映画
を上映するとき、日本なら「日本空襲何々隊」とつけるべきところ
を、そんな題はつけないで「科学無き者の最後」という標題を付し
ているということです。ああ、科学無き者の最後!! アメリカは
最初から日本のことをそう見ており、まさにその通りの結果になっ
たと言い得ましょう。
冒頭紹介した内閣衛星情報センターによる余りにも無様な、形ば
かりの秘密主義を改めてあげつらうまでもなく、永野の指摘が、5
0年近く経過した現代にも、ほとんどそのまま該当していることに
愕然とせざるを得ない。
5.「科学無き者の最後」
たしかに、当時と今では科学技術の発展水準は異なっているし、
航空・宇宙産業はともかく、民生部門を中心に、いくつかの分野で
は最先端の技術力を誇っている。そもそも戦前にしたところで、生
産力はともかく、「科学無き者」であったかどうかは議論のあると
ころだろう。
むしろ問題なのは、永野の言う「マネージメント」のほうなので
はあるまいか。
秘密だと思い込んでいたことが、秘密でも何でもなかったという
ことは、決して笑い話で済まされる類のものではない。単なる間抜
けなエピソードなどでは断じてない。
なぜなら、内閣情報調査室にせよ、内閣衛星情報センターにせよ
、およそ内閣官房が、偵察衛星の現状について基礎的な前提知識を
欠き、用意周到さを欠き、何よりも思慮に欠けていることを雄弁に
物語る決定的事実に他ならないからだ。
NORADのデータを把握していないということは、要するに他
国の軍事衛星の動向についても、満足に承知していないことをも意
味している。
さすがにメーカーも含めた技術スタッフが無知だったなどという
ことは想像し難い。
にもかかわらず、これが内閣官房の意思決定に反映されていない
とすれば、最も基本的な情報の共有すら行わず、妥当な判断がなさ
れていないという点から見て、明らかなマネージメントの誤りであ
る。
いずれ公開されてしまうものを、秘密であるかのように装う態度
も「非科学的」である。「撃ち落されるのを防ぐという秘匿の観点
から高度に幅を持たせた」などと臆面もなく言うのだから、まさに
世界中の笑い物、恥晒し以外の何者でもない。この一事をもってし
ても、各国の情報機関から、その力量を見透かされたことだろう。
こんな有様では、早晩、衛星の運用や情報の活用自体にも支障を
来たす事態が、十分予想されると言わねばならないのだ。
ちなみに、永野は次のように述べて、「科学無き者の最後」の稿
を結んでいる(傍点筆者)。
我々の反省すべきことは、この「科学無き者」の痛罵が、単に科
学兵器や経営能力に対して言われるばかりでなく、実に軍をあれほ
どまで横暴にさした“日本の政治の根本的な仕組みにあてはまる”
ことで、せめて軍内部でも、すなわち陸軍と海軍の間だけでも協力
一致して全兵力を科学的に総合的に運営すれば、まだこれほどの事
態にならなかったと思われるのですが、十本の橋を十本とも河に架
け切らなかった非科学性が、特に陸海軍の不一致という形で最も露
骨に、最も顕著に現れたのは痛嘆の至りというほかはありません。
<参考>『敗戦真相記』
薄い本なのですぐ読める。
http://www.basilico.co.jp/publishing/901784-04-8.html
(注:「内容紹介」から想像されるほどには、バイアスはかかっ
ていない。解説は田勢康弘・日経新聞論説委員)
他にもこんな記述がある。
今度、アメリカの進駐軍が入って来て、日本の官庁と交渉して最
も驚いたことは、日本の官吏が上になるほど物を知らない、アメリ
カでは上役ということは、それだけ下役よりも担任の仕事に通暁し
ていた証拠で、ある局に行って、一番物を知っている人といえば、
局長だということが当然の常識なのですが、我が国の官庁において
は、まさにその正反対である。日本の局長はほとんど何も知らない
。課長はぼんやり知っている。事務官はあらかた知っているけれど
も、細かいことは属僚に聞かなければわからないという状態で、地
位が上になるほど勉強していない。(以下略)
もっと引用したいところだが、切りがないのでやめておく。筆者
は公安調査庁の内部事情しか知らないが、どれもこれも、いちいち
もっともな指摘で、50年近く経った今も、まさにそのとおりの実
態なのだ。
情報活動についても同様である。
英国の諜報機関がことごとく日本側の偽装工作を見破り、技術開
発動向を探知していたことや、なんと日本の一地方の神社の神主ま
でをもスパイとして運営し、日本国内に諜報網を張り巡らせていた
実例が記されている。
一方、日本はどうかというと「『ライフ』というような大衆雑誌
、それも数か月遅れたものを中立国を介して手に入れて、アメリカ
ではこんなことを考えているということを種にして戦争しているの
ですから、その勝敗はもう初めからわかっていた」のである。
対象地域にもよるが、何週間も遅れて公然資料を入手している様
は、基本的には今も何ら変わるところがない。
公安調査庁はさて措くとしても、98年当時、内閣情報調査室の
北米担当はわずか2名しかいないと聞いた。2名でアメリカの分析
などできるはずがなく、「蟷螂の斧」という表現すら憚られるほど
である。その他の地域も概ね同様で、公然資料の分析すら実際には
ままならないのだ。
語学はどうか。
アメリカが徹底的に日本語や日本文化を研究していたのに対し、
戦争になってからこそ英語を研究しなければならない日本は、逆に
英語を禁じてしまった。
語学が軽視されているという点、あるいはできないということに
切迫感がない点は今も昔も変わりはなく、そのことは、たとえば9
8年当時、公安調査庁でアラビア語が出来る者がほとんど皆無だっ
たことを見ても明らかなのである
<付記>
リモートセンシングについて、にわか勉強しているところである
。一知半解であることも省みず、追って具体的な考察を試みたい。
http://www.emaga.com/bn/?2003040014459023015028.xp010617