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イラク戦争、人道上の問題 【国境なき医師団(MSF)】
2003年3月25日
国境なき医師団(MSF)は、独立した、公平な立場に立つ人道援助団体として、政治や国籍、人種、宗教、民族、性別に関わらず暴力にとらわれた人々に医療を届けることを役割としています。そしてコートジボワールやアフガニスタン、リベリア、その他MSFが活動を行うどんな紛争地でも、医師や看護師らは、救命活動のみならず広く証言活動を行っています。
MSFは激しさを増すイラクへの攻撃の結果がイラクとその周辺国に住む人々に及ぶことを懸念しています。MSFは現在6名のボランティアからなる医療チームをイラクに派遣しており、ヨルダン、シリア、イランでもチーム編成を進めています。各チームは、人道援助の必要性の調査を行い、どのような支援活動が可能かを探っています。
MSFはその中立の立場から、戦争について賛成・反対いずれの立場も取ることはありません。しかし、イラクにおける軍事攻撃が激しくなっている現在、下記の事項について深い懸念を抱いています。
# 戦争遂行のあり方と市民への被害
# 市民が安全な地域に逃れ保護を求める権利
# 独立した立場の人道援助団体が、助けを必要としている人々に直接援助を行う権利
# イラク以外でも続いている人道上の緊急事態への関心の低下
●戦争遂行のあり方と市民への被害
この戦争の当事者は、市民への被害を最小限にするよう細心の注意を払うべきであるとMSFは考えています。市民も、市民が生きていくために不可欠な施設も攻撃の対象となるべきではありません。
軍事的な標的と民間人を区別しない無差別攻撃のための武器は使用されるべきではありません。アフガニスタンでは、同盟軍がクラスター爆弾を投下し、国土の多くが不発弾の危険地域に覆われる結果となりました。
大量破壊兵器の使用も懸念されます。アメリカ側もイラク側も、今後発生しうる衝突の中でその使用の制限をしていません。また人道援助団体は、生物・化学・核兵器などの特殊な武器による被害者に対しては、十分な救援の準備を行っていません。
また、民間人は人間の盾として利用されるべきはありません。意図的に移動させられたり安全でない地域からの脱出を阻害されるべきではありません。また戦争当事者は捕虜の扱いについて、国際法に従わなければなりません。
●避難する権利
国際条約には、人が戦争や抑圧された状況から逃れ保護を求める権利が規定されています。安全を求めて他国へ脱出する権利も同様です。アフガニスタンでの戦争の際、戦禍を逃れるために国境を越えようとしたアフガン人に対し、いくつかの周辺国は国境を閉鎖しました。そのため何十万人のアフガン人が、安全が確保されていない国内または国境付近の避難民キャンプでの生活を余儀なくされました。今日もなお、戦闘を逃れた数万人の人々が保護のない厳しい生活環境のキャンプで暮らし続けています。
イラクへの攻撃が行われている間、一般の市民が必要だと判断した時外国へ逃れることができるよう国境は開放されていなければなりません。しかし、すでに戦争の惨害を逃れ避難所を求める人々に対し、いくつかの周辺諸国は国境を閉鎖しています。
●独立した立場の人道援助団体が、助けを必要としている人々に直接援助を行う権利
戦争は、特に食糧供給、飲料水と衛生環境の整備、健康の分野で一般市民の生存を脅かします。人道援助団体は、独立の立場から自ら援助の必要性を調査し、政治的あるいは軍事的な目的の含まれない本当の意味での必要性に基づいて援助を行うことが非常に重要です。人道団体が制約を受けずに活動することは法的に保護されおり、交戦中の当事者自身が救援を行っているからという理由で、自由な活動を妨害されるべきではありません。もちろん市民への援助は人道団体の専売特許ではありません。交戦中の当事者には、占拠した地域の人々に対して基本的な援助を行う義務があります。しかしこの援助は効果的で、公平でなくてはならず、また実際の必要に見合ったものでなければなりません。MSFは今回のイラク戦争で、軍の義務としての援助活動と人道行為とが混同されることで、最も必要としている人々に援助が行き届かなくなることを懸念しています。
アメリカ政府はこの戦争の‘イラク市民の心と気持ちを捉えるキャンペーン’の中で非政府組織を‘影響力倍増器’として利用すると話しています。特にアメリカ政府が財政的に支援しているNGOは軍と共に救助活動を行うことが奨励されています。
このような論議や行動は、戦争当事者とは別個の性質をもつ人道援助団体の中立性や独立性を脅かします。人道援助活動の唯一の目的は、援助の必要性に応えることです。それ以外のいかなる目的のためにも行動しないという根本的な原則は、こうした論議によって深刻に傷つけられることになります。政治的なあるいは宣伝のための援助は、特定のコミュニティーを差別することになったり、人道援助従事者の安全性を保証できなくなる危険性をはらんでいます。
●他地域の人道援助の必要性に対する関心の低下
イラクでの戦争によって、国際社会の関心は世界の他の地域で必要とされている莫大な人道援助からそれ、もともと不足している援助が更に足りなくなっています。アフガニスタンの復興への努力は不十分であり、ブルンジ、コロンビア、スーダンで繰り返し勃発している破壊的な紛争や、世界的に流行しているエイズが世界で何百万人もの人々を虐殺しています。しかし資金供与国やメディアの関心がイラクの戦争に集中する中、他の地域で発生している緊急事態が、必要としている資金や援助を享受することはないでしょう。
http://www.japan.msf.org/news/20030326.html
http://www.japan.msf.org